しまんちゅシネマ

映画ノート

引き裂かれたカーテン(1966)

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引き裂かれたカーテン

Torn Curtain

アルフレッド・ヒッチコックによる冷戦時代を背景にしたスパイサスペンスです。

暖房の壊れた極寒の客船
結婚を控えた物理学者マイケルとサラのカップルだけはベッドでいちゃいちゃ、アツアツだ。
コペンハーゲンで学術会議に出席するはずの二人だったが、ある伝言を受けとった後マイケルの態度が一変
ストックホルムで研究するから一人でアメリカに帰れと言われ、不審に思ったサラはこっそりマイケルの後を追う。
2人を乗せた飛行機は東ベルリンに着いた。


ポール・ニューマンが原子物理学者いうのにそもそも違和感があるのだが、『サイコ』で成功したヒッチコック作品にスター俳優のニューマンとアンドリュースを起用してヒットを狙ったというところか。

最初はニューマンが祖国を裏切り東ドイツに亡命する話?と驚くが、そこからひねりがある。
実はマイケルはその道の権威、リント博士の理論を盗むため、亡命者を装い東ベルリンに派遣されたスパイだった。

とはいえ、所詮は「雇われ」の「臨時」スパイ。
007風なスパイアクション映画になるはずもなく、なんとか任務を果たした後、マイケルとサラがいかに国外脱出を図るかが本作のサスペンスをけん引することになる。

素人な二人ゆえのハラハラもあるものの・・正直あまり面白くなっていかない。
一つには主役2人の魅力が生かされてない点だろう。
せっかく素人カップルの脱出劇という面白い設定なんだから、どうせならスクリューボールコメディにしたらよかったのにと思うのだが、中途半端にまじめで遊びがないのだ。
脱出も人任せで本人の努力を感じられないので、結果に対して爽快感さえ得られない。
冷戦の真っただ中に観れば、今よりも緊張感が伝わったのかな。
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主役よりも印象に残るのは、リント博士、バレリーナポーランド人女性といった脇役の活躍。
舞台で演舞中にマイケルを目ざとく見つけるバレリーナの「眼」の演出なんかホラーだよね。
アメリカに渡ることを夢見るポーランド人女性の切実さは、特に時代を感じさせる。
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布団の中で始まって最後も毛布の中の二人で終わるのはうまい演出。
でも、二人を祝福しがたいのは、アメリカのエゴのみが際立ってしまったから。
最後にポーランド人女性を助けるよう手紙を書くとか、犠牲にした者、助けてくれた面々への思いが表現されるとよかったな。

ポスター(とタイトル)は『サイコ』を意識してのもの?


映画データ
製作年:1966年
製作国:アメリ
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:ブライアン・ムーア
出演:ポール・ニューマン
    ジュリー・アンドリュース
    リラ・ケドロヴァ
    デヴィッド・オパトッシュ
    ルドウィッグドナス