しまんちゅシネマ

映画ノート

父親たちの星条旗


いよいよアカデミー賞の発表が来週に迫ってきましたね。
今年は、どの作品がオスカーを獲得するのでしょう。楽しみです。

ということで、今週はオスカー特集。「プチオスカー祭り」を開催したいと思います(笑)
一発目はこの作品。今頃~!!と笑ったの誰??!(爆)

2006年(米) 監督:クリント・イーストウッド    脚本:ポール・ハギス 出演:ライアン・フィリップジェシー・ブラッドフォード/アダム・ビーチ /ジェイミー・ベル バリー・ペッパーポール・ウォーカー【ストーリー】太平洋戦争末期、硫黄島に上陸したアメリカ軍は日本軍の予想以上の抵抗に苦しめられ、戦闘は長引き、いたずらに死傷者を増やす事態に陥っていた。そんな中、擂鉢山の頂上に星条旗が高らかに翻る。この瞬間を捉えた1枚の写真が銃後のアメリカ国民を熱狂させた。星条旗を掲げる6名の兵士、マイク、フランクリン、ハンク、レイニー、アイラ、ドクは一躍アメリカの英雄となるのだった。しかし、その後祖国に帰還したのはドク、アイラ、レイニーの3人だけだった。
■感想
2部作の中の【アメリカから見た硫黄島】の本作。やっと観ました。

凄かったですね。
まず感じたこと。戦争って戦う相手が憎くてするんじゃないんだということ。
やらなければ自分がやられる。友たちがやられる世界。
ど迫力の戦闘シーンは当然CGなのでしょうが、緊迫感と重圧感はさすがでした。
暗く沈んだ色彩も不安や抑圧されたおどろおどろしさを演出するのに効果的だったと思います。

この作品、失われていく命や家族の悲しみを描くたぐいの通常の戦争物ではありませんでした。
すり鉢山に掲げられた旗。それを見た国民は誰もが戦いの勝利をイメージし沸き上がります。
旗を掲げた兵士たちはヒーローとして祭りあげられ、帰還した3人の兵士たちは
戦争資金を調達するための戦時国債キャンペーンに駆り出され各地を回ることになるんですね。

真のヒーローは戦地で死んでいった戦友たち。その思いが彼らを苦しめます。

3人の兵士の一人、ドクを演じたライアン・フィリップ
ちょっと心配していた彼の演技ですが、それなりに良かったと思いました。
戦地での経験をずっとトラウマとして持ち続け、つかみ所のない不安におびえる姿は、
彼の幼さの残る風貌ゆえ余計不憫でもありました。
結局ドクは生涯この【闇】を抱え続けることになるんですよね。

戦争が彼らに残したものは何だったのかを、今までにない視点から描いている点が面白かったです。
3人の帰還兵の一人インディアンのアイラのエピソードに泣けました。

これはやはり硫黄島からの手紙で、日本側の視点からも観て完結すべき作品でしょうね。
ところが「硫黄島からの手紙」はアメリカではかなりの限定公開となり、
結局私の住むところでは観ることができませんでした。

せっかくの2部構成。監督の思いもあるでしょうに、
配給会社には伝わらなかったということでしょうか。

結局オスカーにノミネートされたのは「硫黄島からの手紙」のほうでした。
作品賞、監督賞、オリジナル脚本賞にノミネートされています。結果が楽しみですね。
監督賞はとって欲しいなぁ。

*追記* 調べてみたら「硫黄島からの手紙」は地元で今公開してました。
ずいぶん遅れての公開でしたが、やはりアカデミーの影響で拡大になったのかも。

★★★★☆