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映画ノート

ランド・オブ・プレンティ


2004年(アメリカ/ドイツ)監督・脚本:ヴィム・ヴェンダース出演:ミシェル・ウィリアムズ/ジョン・ディール/ウェンデル・ピアース/リチャード・エドソン/バート・ヤング     ショーン・トーブ/バーナード・ホワイト/グロリア・スチュアート【ストーリー】アメリカに生まれ、アフリカで育った少女ラナ。彼女はイスラエルのテルアビブ空港からロサンジェルスへと向かい10年ぶりの帰国を果たす。目的は亡き母の手紙を伯父に届けるため。ボランティアをしながら伯父を捜すラナ。一方その頃伯父ポールは、たった一人で自由の国アメリカを守ろうと滑稽なほど真剣に活動を続けていた。ベトナム戦争のトラウマが9.11テロによって呼び覚されてしまったのだ。ある時2人は、ホームレスのイスラム系青年が殺された現場で偶然再会する。青年がテロリストではないかと疑うポールは事件の真相を探るため、そしてラナは遺体を残された兄に届けるため、2人は一緒にアメリカを横断する旅に出る。

ヴェンダース特集第4弾! ヴェンダースが憂うアメリカ。この国に光を!「ランド・オブ・プレンティ

■感想
9.11の後遺症に苦しむアメリカの現状を静かに見つめたヒューマン・ドラマです。

亡き母の手紙を届けるためラナ(ミッシェル・ウィリアムズ)が10年ぶりにアメリカの降り立ちます。
ホームレスのシェルターでボランティアをしながら伯父を探すラナ。
ラナは、偏見を持たず、素直にどんな人も愛せる美しい少女に育っていました。

一方、伯父ポール(ジョン・ディール)はバンに物々しい撮影機材を装備し、アラブ系の人間をマーク。
怪しいと思えばどこまでも追跡するという生活。次第に、彼は自警的に活動しているベトナム帰還兵だということが分かります。愛車であるバンには国旗を掲げ、携帯着信音はアメリカ国家。


イスラム系の人間を全てテロリストと思い込むポール。
これは一種の911テロの後遺症なのです。

ここまで大胆に行動することはないにしても、
多かれ少なかれ、アメリカ人の心の中にはポールと同じ思いがあるのではないでしょうか。
誰とでも分け隔てなく心を交わし合うことの出来る、天使のようなラナの姿と対照的な描き方が印象的です。

アラブ系の人間がみんなテロリストではなく、当然のことながら、彼らの多くは普通の人間。
長くアメリカに暮らした外国人であるヴェンダース監督には、今のアメリカ人の姿は滑稽であり、
憂うべき存在なのでしょうね。

ラナとの旅を通してポールが気付いていくもの。
それは、どんな国の人にも愛すべき家族がいるということ。

私たちは偏見を捨て、見つめ直さなければいけないことがたくさんあるのだと気付かされます。


静かに静かに、ヴェンダース監督の優しさが沁みてきます。
今回は緑色が効果的に使われ、癒しを感じます。

評価は様々なよう。アメリカでの評価も低いところをみると、あまり受け入れられないのかな。
ですが、私にはピタッと来ました。大泣きです。



★★★★☆