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映画ノート

アメリカの友人

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1977年(西ドイツ/フランス)監督:ヴィム・ヴェンダース     原作:パトリシア・ハイスミス出演:デニス・ホッパーブルーノ・ガンツ/ジェラール・ブラン/ダニエル・シュミットニコラス・レイ   リサ・クロイツァー/ルー・カステル【ストーリー】絵画の贋作商人トム・リプレーは、マフィアとつながりのある男ミノにある男を殺すように迫られる。リプレーは不治の病にかかり、死の不安におびえる額縁商人ヨナタンを病気の治療とひきかえに暗殺者に仕立て上げようと計画し、「アメリカの友人」として彼に近づく。最初は彼を騙すつもりのリプレーだったが、彼はヨナタンに友情を覚えるようになり、そのために組織に追われるはめになってしまうのだが…。

 

  ヴェンダース第3弾はサスペンスなヴェンダース

 

原作はパトリシア・ハイスミスアラン・ドロンが主演した「太陽がいっぱい」などのリプリーシリーズの映画化です。

 

カウボーイハットのアメリカ人、トム・リプレーにデニス・ホッパー
白血病の額縁商人ヨナタンに「ベルリン 天使の詩」で主役の天使を演じたブルーノ・ガンツ

 

ヴェンダースの初期の作品である本作は、私の中のヴェンダースのイメージと少し違うものでした。

 

デニス・ホッパー演じるトム・リプリーは、贋作商人をしながら、危ない橋をいくつも渡って来た男。
その彼がマフィアに通じる一匹狼ミノに殺人を依頼され、刺客として目をつけたのがヨナタンでした。
治療費が必要だというヨナタンの弱みにつけいるものでもあったわけですが、一つには初対面の時に贋作を見破られ、握手を無視されてプライドが傷つき、額縁商人ながらも確かな目を持つヨナタンへの嫉妬の気持ちもあったのかもしれません。

 

やがて、ヨナタンはある男の暗殺を実行に移します。

 

たんなる額縁職人のヨナタンが、駅でターゲットを密かに追跡し、暗殺を謀ろうとする場面では、
彼の心臓のバクバク感が伝わる感じでものすごく緊張します。

 

そして第二の殺人依頼を受けるヨナタンに、危険を感じ、依頼を断る様に告げるレプリー・・・。

 

二人の間にいつしか友情みたいなものが芽生えて行くんですね。
リプリーヨナタンに孤独な自分自身を重ねたのかも知れません。

 

なくして惜しいものなど何も無いという、二人の捨て身な魂が共鳴するところがなんだか切ない。。

 

こういうサスペンスな作品にあっても、ヴェンダースの映像にはある種の美しさがありました。
全体的にトーンを落としたクールな色彩の中、差し込まれる赤やオレンジなどの鮮やかな色彩に目を奪われます。

 

救急車と妻の赤い車が波打ち際を走るシーンは特に美しい!!



ラスト、レプリーが浜辺を見下ろすシーンでは、彼の孤独は果てしなく続くんだと切ない気持ちにさせられます。
この頃のデニス・ホッパーはなかなかいいです。

ヨナタンを演じたガンツが途中から「24」のキーファーに見えて来たのは私だけでしょうか?似てません?
あ、彼は「ヒトラー 最期の12日間」でヒトラーやってるんですよね。これまた違った雰囲気で驚きです。

 

細かいところをいうとマフィアの関係とかも分かりにくく、ツッコミどころは満載。
でも、あまり深く考えず、このクールで刹那的な雰囲気を堪能する作品なんだと思います。




★★★*☆