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映画ノート

ノーカントリー


2007年(米)監督:ジョエル・コーエンイーサン・コーエン  原作:コーマック・マッカーシー『血と暴力の国』(扶桑社刊)出演:トミー・リー・ジョーンズハビエル・バルデムジョシュ・ブローリンウディ・ハレルソンケリー・マクドナルド/ギャレット・ディラハント/テス・ハーパー/バリー・コービン/スティーヴン・ルート【ストーリー】人里離れたテキサスの荒野でハンティング中に、銃撃戦が行われたと思しき麻薬取引現場に出くわしたベトナム帰還兵モス。複数の死体が横たわる現場の近くで、莫大な現金の入ったスーツケースを発見した彼は、危険と知りつつ持ち帰ってしまう。その後、魔が差したのか不用意な行動を取ってしまったばかりに、冷血非情な殺人者シュガーに追われる身となってしまう。モスは、愛する若い妻カーラ・ジーンを守るため、死力を尽くしてシュガーの追跡を躱していく。一方、事件の捜査に乗り出した老保安官エドトム・ベルだったが、行く先々で新たな死体を見るハメになり苦悩と悲嘆を深めていく…。
■感想
オスカー前哨戦で非常にいい滑り出しを見せている、コーエン兄弟の「ノーカントリー」を観てきました。
コーマック・マッカーシーの戦慄の犯罪小説『血と暴力の国』の映画化である本作は、バイオレンス満載の犯罪ドラマです。
これ批評家の評価が非常に高いんですね。

舞台は80年代のウエストテキサス。
ハンティング中に、たまたま麻薬取引が行われたと思われる現場に出くわしたベトナム戦争帰還兵のモス。
彼は莫大な金の入ったスーツケースを発見し、持ち帰ってしまいます。

数体の死体が転がる現場に残されたトラックの座席には、実はメキシコ人の男が息も絶え絶えになりながら生存しており、
モスに「水を…」と要求していたのです。
夜、トレーラーハウスに戻った後も、その男に水をあげなかったことが気になったモスは、
なんと水をもって現場に戻ってしまうんです。この辺の描写が可笑しいでしょ。
ものすごい緊迫感の中、あーあ、という笑いが常についてくるのですよ。さすがコーエン兄弟

しかし現場には何者かがいて、襲撃を受けるモス。
命からがら逃げ帰るものの、そこから執拗に命を狙われることになります。

モスの命を狙う殺し屋が、とびっきり恐ろしい!! 
目的を遂行するためなら、途中出食わす人の命なんて虫けら同然!時にはコインを投げて殺すかどうかを決めてしまう
サイコパスな殺人マシーンなのです。
武器は家畜用のエアガン!ドアの鍵穴もぶっ放す。人の額もぶっ放す。今後これ流行らなきゃいいけど…。
なぜかヘアースタイルは変形マシュルームカット?(爆)
傷ついた身体を自分で手当てするところは,いやに専門的で几帳面。プレデターかよ!と突っ込みたくなりますが
そのアンバランスなキャラがとってもシュール。


このマシュルームサイコを演じているのが海を飛ぶ夢ハビエル・バルデムなんですね~。えーー???です。ゴールデン・グローブ助演男優賞にノミネートされてますね。納得、納得。
この役ヒース・レジャーでという話しもあったようですよ。ヒースのサイコぶりも観たかった気もしますが。



追いかけられるモスを演じるジョシュ・ブローリンダイアン・レインの夫なんですって。それもびっくり。
妻に楽をさせようと大金を盗んだのに、妻の命を危険にさらしてしまう運の悪い男を好演。
彼も非常にいい味を出していました。

あ、忘れるところでしたが、心に傷をもつ地元の保安官を演じるのがトミー・リー・ジョーンズ
モスとその妻の命を守るために頑張るという役どころ。彼と若者警察官とのやり取りも笑えます。
ただね、コテコテのテキサス訛りなんですよ。(笑) 聞き取りにくいっつーの。参りました。

とにかくこの世はこんなにも無情なんだよというお話ですが、マシュルームサイコの怖さで途中席から飛び上がりそうになったり思わずヒャッと声を上げてしまったり。この男から逃れられるのかとドキドキな反面、笑いどころも満載です。

シュールな犯罪ものという意味では「ファーゴ」に感じが似てるかもしれません。
殺人シーンが多く出て来る割には、さほどグロい感じではなく、凛とした静寂感のある映像です。




日本公開は来年の3月です。



★★★★☆