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映画ノート

スウィート・ヒアアフター


1997年(カナダ)監督・脚本:アトム・エゴヤン原作:ラッセル・バンクス出演:イアン・ホルム/カーザン・バンクス/サラ・ポーリー/トム・マッカムス/ガブリエル・ローズブルース・グリーンウッドアルバータ・ワトソン/アール・パストコー/アルシネ・カンジアン【ストーリー】スクール・バスの転落事故が発生、町の多くの親たちが子供を失う。彼らの代理として集団訴訟の手続きを行うことになった弁護士のスティーブンが町を訪れ、被害者に有利な条件で訴訟をまとめてゆく。だが、事故の唯一の生存者ニコルの証言によって、事件は意外な展開を見せる。

黒く塗りつぶせ! サラ・ポーリー !!

■感想
雪に被われた静かな田舎町で、バスが湖に転落するという事故が起こった。
町の多くの子供たちは死んでしまい、生存者はバスを運転していた女性ドライバーとニコール(サラ・ポーリー)のみ。

被害者家族の代理として、集団訴訟の手続きを担当することになる弁護士スティーブンにイアン・ホルムです。
バスドライバーの証言などを通し、町を相手取った訴訟の勝利を確信するスティーブンでしたが、
生存者のニコールの証言によって事件は思わぬ展開を見せるのです。


これ、難解です。
なぜなら、答えというものを与えられていないから。
ニコールの証言は真実だったのか、それとも偽証だったのか、、。
物語は時間軸が交錯する作りで、人々の日常、事故の当日、そしてその後が描かれ、分りづらい点がある一方で、
事故に関わる人々の心理が少しずつ違った側面を見せてくれるのが興味深いところでした。


一方、弁護士スティーブンには、麻薬中毒の娘がいます。
物語が進むにつれ、父娘の間には大きな確執があることが分って来るのですが、その原因はどこにあったのかについて考えさせられました。

独自の解釈ですが、「3歳の娘のあの日」、ある勇気が出せなかったことに関係してるのではないかと思いました。
結果的にはことなきを得たものの、自分への嫌悪感が娘との確執を生んだのではないか。

物語で見え隠れする町の住民の親子関係、そして弁護士の親子関係を通し、
さまざまな奥深いところにある心の闇に迫ります。

凛とした表情のニコールを演じたサラ・ポーリーは、ここでも透明感のある美しさが印象的でした。
劇中彼女が歌う澄んだ歌声もとても美しいです。サントラに収録されている曲の歌詞もサラによるものが数本。
脚本を手がけるサラはものを書く才能にも恵まれてるようですね。




※ここからは物語の終盤の内容に触れますので、未見の方はスルーしてください。


サラの証言は偽証だったのでしょうか。。。

私はあのまっすぐな瞳は真実を物語っているのだと思いましたが、父への復讐の意味の偽証と捉える方が正しいのかな。。
証言によって裁判は負け、特定の人物を窮地に追いやることにもなるでしょう。
それでもニコールにはそうしなければならない理由があったのですね。

タイトルのSweet hereafterとは「穏やかなその後」という意味らしいです。

町の人々の様々な日常と問題が見えることになったスクールバス事故でしたが
全てが終わり、時間が経てばいつの日か町にも穏やかなその後が訪れることでしょう。




美しい風景、凛と張りつめた冷たい空気を感じる作品。カンヌでグランプリを獲得しています。




★★★★☆