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映画ノート

乙女の祈り


1994年(ニュージーランドアメリカ)監督・脚本:ピーター・ジャクソン出演:メラニー・リンスキーケイト・ウィンスレット/サラー・パース/クライヴ・メリソン/ダイアナ・ケント【ストーリー】ニュージーランドのクライスチャーチにに暮らす内気なポウリーンと、イギリスからの転校生ジュリエット。親友同士になり、二人だけの世界を作り上げるが、その絆があまりに強いため周囲の大人は彼女たちを同性愛と見て引き離そうとする。そんな二人が、一緒にいるために立てた残酷な計画とは…。

プレオスカーノミネーションシリーズ第5弾 ゴールデングローブ2冠! ケイト・ウィンスレット


■感想
ゴールデン・グローブで主演女優賞、助演女優賞を受賞したケイト・ウィンスレットのレビュー作です。

14歳の少女ポウリーン(メラニー・リンスキー)はイギリスからの転校生ジュリエット(ケイト・ウィンスレット)と意気投合。
空想の中で互いを夫婦と位置づけ、二人だけの世界に没頭するうち、友情の域を超えた深い絆で結ばれていきます。
そんな折り、家庭の諸事情で、ニュージーランドを離れなければならなくなるジュリエット。
共に渡航することを切望するポウリーンですが、その思いは叶うはずもなく。。

これは1954年にニュージーランドで起きた、実際の殺人事件を題材に描いているんですね。
映画は、当初事件解明の証拠品ともなった少女の一人の綴った日記の表現をそのまま使うことで、愛するものから自分を引き裂こうとする大人へ激しい憎しみや、殺人に至るまでの心理の全てがリアルに描き出されます。

175人の中からオーディションで選ばれたケイト・ウィンスレットはこれがデビュー作とは思えない堂々とした演技。
冒頭ではダサすぎる下着姿も披露してくれてますが、奔放で繊細な少女の心理を見事に表現していて、この頃から大物の片鱗をのぞかせています。



監督は『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソン
少女たちの作り出す、幻想の世界の映像は時にグロテスクで、流石にピーター・ジャクソンというところ。

撮影を試みた実際の殺人現場である森の小径では、漂う異常な空気に危険を感じ、そこから数百ヤード離れた場所で撮影を敢行したなどの逸話も。


映画の中で日記を綴っているのはポウリーンという設定ですが、後にミステリー作家が自分がその日記の持ち主で、
少女のうちの一人ジュリエットであることをカミングアウトしています。

彼らはその年齢から刑期を経て釈放されていますが、互いに二度と会わないことを条件とされています。
どちらが悪いということでなくても、共鳴し合うということは時に思いがけないエネルギーを生むものですね。

少女の残酷なまでの切実な思いを描く心理ドラマとして観応えのある作品でした。


★★★★☆