しまんちゅシネマ

映画ノート

ラブリー・ボーン

 
 

■感想
アリス・シーボルの同名ベストセラー小説の映画化『ラブリー・ボーン
14歳でレイプ殺人犯の犠牲となり死んでしまった女の子スージーが、天国との狭間で家族を見守り成長していく様子を描く、スピリチュアルなファンタジーです。
 
 
主人公のスージーは14歳。
とっても可愛くて元気に暮らしていたのに、ある日いきなり近所の変態オヤジにレイプされ殺されてしまいます。
家族の待つ家に、もう帰ることも許されない
これから素敵な恋に発展しそうだったのに、大好きなボーイフレンドとももう会えない。
自分の死を受け入れられず、現世と天国の狭間にとどまっているスージーは、
やがて喪失の悲しみからバラバラになっていく家族の様子を目の当たりにするのでした・・・
 
この映画に関しては、もっと霊的なもの、犯人を霊がこっぴどくやっつけるといったものを期待した人が多いのかもしれませんね。
でも本作は家族の崩壊と再生の物語であり、思春期にあるスージーの青春成長物語でもあります。
 

ここからはHKさんに教えていただいたことの受け売り(笑)
原作者のアリス・シーボルドは自身がレイプの被害者で、
1999年にその体験と再生を綴った『ラッキー』という自伝を発表しています。
ちなみにラッキーというのは、警察に言われた「殺されなかっただけ君はラッキーなんだよ」という言葉からだそうですが、レイプにあったばかりでこの言葉をどんな風に受け止めたでしょうね。
それでも自分が立ち直るには、自分自身を救うしかないと必死にがんばったアリス。
ラブリー・ボーン』は、そんな原作者が今度は被害者たちを癒し、心を開放しようとする作品なんでしょうね。
終盤スージーがレイとキスをする展開に違和感を感じる人もいるかもだけど、
これこそが原作者が被害者の心を慰める優しいプレゼント!なるほどです♪
 
 
原作ではスージーの母親が事件を捜査する刑事と不倫をしてしまったり、スージーの死以前に、
母親としての自分の存在に疑問を持っていたりと、ちょっとややこしいのですが、
ピーター・ジャクソンは枝葉を削って、すっきりとスージーの死を中心に家族のコーピングに
焦点を当てることに成功しています。
ある意味原作者以上に原作者の気持ちに寄り添った作品といえるかもしれません。
ただ、少々はしょりすぎな部分があり、分かりにくいと感じる人もいるかも。

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期待していた天国の映像はきれいではあるんだけどややCG感が気になり、
思ったものとは違いましたが、映画自体には原作以上に感動! 
スージーが天国に向かう様子には大泣きでした。
 
ちなみに「つらら」はスージーの仕業? 途中何度かスージーがつららを見るシーンがありましたね。