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映画ノート

路上のソリスト


2009年(米)監督:ジョー・ライト出演:ジェイミー・フォックス/ロバート・ダウニー・Jr/キャサリン・キーナートム・ホランダー/リサゲイ・ハミルトン   スティーヴン・ルート/レイチェル・ハリス/アンジェラ・フェザーストーン/ジャスティン・マーティン【ストーリー】人生に行き詰まっていたLAタイムズのコラムニスト、スティーヴ・ロペス。ある日彼は、2弦しかないバイオリンで美しい音色を奏でるホームレスの男と出会う。ナサニエル・エアーズと名乗るその男が名門ジュリアード音楽院に通っていたと知り、俄然興味を抱く。久々に記者魂に火のついたロペスは、ナサニエルの人生の謎を追って取材を開始し、少しずつ彼の生い立ちを紐解いていく。路上の天才音楽家ナサニエルを紹介した彼のコラムは大きな反響を呼び、連載を続けることにしたロペスはさらなる取材を重ねる中で、次第にナサニエルをなんとかして救いたいと願うようになるのだが…。

男の友情シリーズ第3弾!

■感想
ロバート・ダウニー・Jrが演じるのは、実在のコラムニスト、スティーヴ・ロペス。
彼は2弦しかないバイオリンで美しい音を奏でるホームレスのナサニエルジェイミー・フォックス)にであい、
天才と将来を期待されながら、路上生活を送るナサニエルに興味をもちます。

路上の天才音楽家を紹介するコラムが人気を博し、その実態に迫るうち、
ロペスはナサニエルの音楽家としての再生を願うようになるのですが、果たしてロペスの思いは通じるのか。。

実は‥
観る前に、これは男同士の友情を描いたものと勝手に予測していたんですね。
路上のソリストが、さらばホームレス生活とばかりに、華麗にステージに返り咲くサクセスストーリーで
天才の復帰を助けたコラムニストとの感動友情物語‥って(笑)

でも微妙に違いました。

ナサニエルの抱えるものが、思いの他大きかったですねぇ。
彼が路上に生きるには、それなりの理由があり、
ロペスがよかれと思って行動することが、必ずしもナサニエルを助けることにはならない。
それどころか、ロペスの独りよがりな思いはナサニエルを混乱させ、音楽の領域さえも侵すんですね。

それでもロペスの勝手な茶番劇としているのではなく、手を差し伸べたロペスの気持ちは
ナサニエルに届いてはいるのです。まだ届き始めたばかり、、とも言えるかな。



現在進行形の実話ということもあり、ミラクル的なお話になってないことで、映画的には地味です。
それでもナサニエルとロペス双方の葛藤は丁寧に描かれていたと思うし、
彼らなりの距離感を保つ道を見出す様子も現実的で、こういう形の友情もあるんだなと感じますね。

LAに集う多くのホームレスの実態、精神疾患を患う人をどう支えるべきかというような社会的な問題も考えさせられます。
音楽に映像がマッチしてると思う美しいシーンに監督のジョー・ライトらしさを感じるところでしたが
暗闇の中、音を光に置き換えたような映像は、挑戦的試みとは思うものの、
人によっては、けいれん発作を誘発されるかも~とちょっと心配になっちゃったw

この映画で心に残ったのは、路上に生きるナサニエルの姿。
彼は雑踏の中に、彼の音楽の神ベートーベンを感じ、人びとが安らかに一日を終え眠りにつくことを願っている。
立派なコンサート会場よりも、LAの路上こそが彼の音楽の舞台なのです。
何を素晴らしいと思い、感動するか、価値観というのは人によって違うのだということも考えさせられました。


★★★★☆