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映画ノート

【映画】スチュアート:ア・ライフ・バックワーズ(原題)トムハ&カンバーバッチで綴るあるホームレスの物語

 

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 スチュワート:ア・ライフ・バックワーズ(2007イギリス
英題:Stuart: A Life Backwards

   

監督:デヴィッド・アットウッド
出演:ベネディクト・カンバーバッチ /トム・ハーディ /エドナ・ドール /ヒュー・アームストロングン

【あらすじ】
主にホームレスの支援をする福祉施設のファンドレイザーとして働く作家のアレクサンダーは、集会で出会ったホームレスのスチュアートに興味を持ち、彼の伝記を書きたいと申し出る。



【感想】
トムハ40歳のお誕生日おめでとう!!!
今日はトムハ2007年の出演作品。
アレキサンダー・マスターズの同名作をもとにした、あるホームレスの物語です。
 
トムハ演じるタイトルロールのスチュアートはなんとアル中のホームレス。
福祉施設のファンレイザーを務める作家のアレキサンダーが、施設の集会で知り合ったスチュアートに興味を持ち、彼の伝記を書きたいと申し出たことから、2人の不思議な交流が始まります。
スチュアートの提案でその人生を逆にたどるうち、彼のトラウマに満ちた半生が明らかになるわけです。

2007年の作品だからトムハもカンバーバッチもまだ殆ど無名ですが、2人ともとってもいい演技をしています。
カンバーバッチは一見冷徹に見えて、好奇心旺盛で人を見かけで判断しない寛容性も持ち合わせた男
生まれのよさがにじみ出るあたりカンバーバッチにピッタリです。


一方のトムハは汚い恰好をしたホームレス姿なんですが、それ以前にぼそぼそ力のない喋りとひょこひょこな歩きっぷりに驚きます。アル中でこんなになる?と思いきや、ちゃんと理由があった。

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以降、少しネタバレで書いてますので、何も情報をもたずに観たい方はスルーでお願いします。



 スチュアートの身体的な障害は、実は筋ジストロフィーを患っていることからきていました。
それがわかるのは中盤以降なんですが、振り返って観てみると、例えば最初にアレキサンダーを自分の場所に案内するときも、小さな段差を超えるのも大変そうだったり、箱を地面に置いて姿勢を正すときにも膝の上に両手をついて身体を支えるいわゆる登はん性起立と言われる筋肉疾患を患う人特有の動作をしてるんですよね。
細かいところが丁寧に演出されてると思います。

さて、そんなスチュアートとアレキサンダーはスチュアートの過去を辿るという作業を通じて、交流を深めていきます。
次第に明らかになる半生が思いのほかシビアでね。
姉や母親がちゃんといるのに、家族は12歳の時からスチュアートが路上生活を送ることを見守るしかできない。
ドラッグや酒で紛らわすしかないスチュアートが悲しすぎるんですよね。
過去にひどい目に遭ったということだけでなく、今現在彼が抱える心の闇が。

それでもスチュアートが全てを明かすのは、アレキサンダーに友情を感じたのもあるでしょうけど、語ること自体が彼にとってはコーピングになっていたんだなと、お姉さんの台詞からも察します。
だから最後にどっと寂しさがこみ上げるのだけど、一方でどこか穏やかな気持ちにもなる。


作風としては原作者自身によるものと思われるユニークなイラストが差し込まれたり、音楽がポップで優しい。
カンバーバッチとトムハのやりとりがユーモラスだし、若き2人の演技を堪能できるのもお得感あり。
特に過去にさかのぼり、激しい演技を披露するトムハのふり幅も要チェック。
彼の何も否定できないと思ってしまう、力がない(多分筋力低下を演出)のに凄みのある目の演技にもひきこまれた。
イギリスのホームレスに対する福祉の実態も興味深かったです。

こちらオフショット

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関係ないけど、アレキサンダーの兄(?)(右から二番目)を演じてた俳優さんがバッチそっくりで見分けがつかないw


日本でもソフトが販売されるといいなと思います。