しまんちゅシネマ

映画ノート

正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官


2009年(米)監督:ウェイン・クラマー出演:ハリソン・フォードレイ・リオッタアシュレイ・ジャッドジム・スタージェスクリフ・カーティス   サマー・ビシル/アリシー・ブラガアリス・イヴ/メロディ・カザエ/ジャスティン・チョン/メリク・タドロス【ストーリー】ロサンジェルスでICEの捜査官として働くマックスは、密入国不法就労者の取り締りに当たりながらも彼らにしばしば同情的で、同僚からも呆れられるほど誠実な男。そんなある日、メキシコ人女性ミレヤが不法就労者の一斉摘発で捕まり、アメリカ生まれの幼い息子ホアンを残して強制退去に。それに心を痛めたマックスは、ホアンを捜し出してミレヤの実家まで送り届けるが…。女優を目指すオーストラリア出身のクレアは、グリーンカードの判定官コールと出会い、ある提案を持ちかけられ…。バングラデシュ出身の高校生タズリマは、9.11についての発言が問題視されICEとFBIの強制捜査を受けてしまい…。
■感想
アメリカの移民問題を描く社会派群像ドラマです。

この映画には様々な移民が登場します。
授業中に同時多発テロに首謀者に同情的なエッセイを書いたバングラデシュ出身の高校生のエピソードでは
911以後、過剰なまでにテロにナーバスになったアメリカの側面が明らかになるし、
日本向けのアメリカを守る正義か。人々を救う正義か】というキャッチコピーを見ても
移民問題に対するアメリカの姿勢を批判する映画のような振りですよね。

アメリカ人の多くもその臭いを嗅ぎ取ってか、この映画に対する評価は低く、ロットントマトで16%。
移民を受け入れることには大きなリスクがつきまとい
安全な国家を目指すためには、ルールを決め線引きをしなければならない。
だから批判的に描かれることには納得がいかないというところでしょう。

でもこの映画の言わんとするところは、批判だけではないのですよね。

移民の国籍も様々、不法移民の方法も様々で闇の手段というものもある実態。
移民に対するアメリカの姿勢と、失われつつある人道性。
それでも国籍を取得しようとする人びとの思い等々。

ロサンジェルスを舞台に、複雑に重なり合うハイウエイの映像を何度も見せながら
多くの人種が、何世代にも渡ってこの国の住人たろうと生きている。
これがアメリカの現状であり、これからも問題に対峙しながらやっていかなければならない。
甘さが気になるところでしたが、不法移民の問題を幾つかのドラマを絡めながら
無駄なく見せ切った手腕はなかなかのものでしょう。

自身が南アフリカからの移民という監督は、アメリカの愛国心の象徴のようなハリソン・フォード
人道的は捜査官を演じさせることで、人間らしさを忘れない国であることに希望を託したのかもしれません。

アクションなしに、渋さで勝負のハリソン・フォードの温かみのある演技もいいです。

アクロス・ザ・ユニバース』のジム・スタージェス君がここでも素敵な歌声を聴かせてくれます。
あやふやなヘブライ語でのチャントも味わい深い。彼の声には痺れるわ~。


★★★*☆