しまんちゅシネマ

映画ノート

闇の列車、光の旅


2009年(メキシコ)監督:ケイリー・フクナガ出演:エドガー・フロレス/ポーリナ・ガイタン/クリスチャン・フェラー
■感想
今日は今年のサンダンス映画祭で監督賞と撮影賞に輝き話題となった『闇の列車、光の旅』を
日本人とスウェーデン人のハーフであるケイリー・フクナガ監督が、
新聞で見た「メキシコからの移民80人がトラックで発見され、うち17人が既に死んでいた」というニュースに
インスパイアされ撮った作品だそうです。

映画で描かれるのは、メキシコから列車のてっぺんに乗りアメリカに不法移民しようとする
ヒロイン、セイラと、メキシコのストリートギャング集団に属するキャスパー(エドガー・フロレス)の物語。

セイラが幼い頃にアメリカに渡り、今は新しい家族と暮らしている父親が、
セイラを迎えにも戻って来た。セイラは父たちとニュージャージーに向かうことになります。
多くのメキシコ人が列車の・・・と言っても列車の天井に乗り、アメリカに移民を試みるのです。
そんな不法移民者を恐怖にさらすのは、飢えや事故、国境警備員などの政府機関だけではなく
ストリートギャングによる襲撃。
彼らは移民者のなけなしの金を求め、列車に飛び乗り金を巻き上げます。
彼ら鉄パイプで手作りしたような銃を持ち、裏切り者を殺し切り刻んで犬のえさにするような非情な集団だから
怖いのなんの。
ギャングの一員キャスパーはそんなギャングに疑問を抱き始めていた矢先
ボスとまだ子供の新入りスマイリーとともに列車の襲撃に参加。
ところがボスがセイラにめをつけレイプしようとしたことからボスを殺してしまい
ギャング一味に命を狙われることになります。

この映画は移民やストリートギャングと言ったメキシコの暗部の実態を鮮烈に描くと同時に
移民の少女セイラとストリートギャングのキャスパーのロマンスでもあるんですね。
レイプから救ってくれたキャスパーにセイラは想いを寄せることになり
キャスパーもまた自分の行く末に希望はないことを悟っていながら、セイラを国境まで連れて行くことに
使命を感じ始める。それは切ない逃避行でしかないのですが・・・

今年のサンダンス映画祭でも監督賞、撮影賞を受賞した本作。
自ら列車の天井で移民者と行動したというだけあって、移民の実態のリアルさには驚くことばかり


日本人の血のなせる技なのか、冒頭の紅葉の美しさには目を奪われました。
夜の列車の存在感など、その撮影技術に確かな力とセンスを感じます。

セイラとキャスパーの命がけの旅の行く末は・・・
私たちが想像もできないメキシコの若者の過酷な日常。。心に残る一本でした。

製作にはガエル・ガルシア・ベルナルディエゴ・ルナが名を連ねていました。

先日発表されたワシントンDC映画批評家協会賞でも『The White Ribon』をおさえ、外国語映画賞を獲得しています。




★★★★☆