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映画ノート

バーダー・マインホフ 理想の果てに


2008年(ドイツ/フランス/チェコ)監督: ウーリー・エデル 出演: マルティナ・ゲデック/モーリッツ・ブライブトロイ/ヨハンナ・ヴォカレク/    ナディヤ・ウール/ ヤン・ヨーゼフ・リーファース/ ブルーノ・ガンツ
■感想
今日はロマンス映画ちょっとお休み。
先日kaz.さんが『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)』をレビューされてました。

日本で浅間山荘事件が起こったのが1972年。
時代的には同じ頃、ドイツでは極左地下組織バーダー・マインホフ・グループ(後のドイツ赤軍
が世間を騒がせたんですね。
映画のタイトルにもなってるバーダー・マインホフというのは
グループを率いるウルリケ・マインホフとアンドレアス・バーダーの名前からとっています。


映画はグループの10年に及ぶ闘争の歴史を描くもの。
反帝国主義をかかげ、アメリカのベトナム戦争に反対し、、
彼らなりの理想があり、活動を始めたはずなのに、
活動資金調節のために銀行強盗をしたり、主張を通すために政治施設を爆破したり。。

ミュンヘンオリンピックを血塗られた悲惨なものに変えた黒の9月事件の首謀グループである
パレスチナ過激派のもとで戦闘訓練まで受けた彼らは、その後本格的な爆破テロと暗殺を行う
凶暴なテロ集団と化してしまいます。



前半は登場人物の顔がごっちゃになってしまったのと、
さまざまな事件がダイジェスト的に描かれるので、ちょっと分かりにくいと感じたのだけど
メンバーの葛藤が描かれる後半は引き込まれました。

特に創始者でもある元ジャーナリストのウルリケ・マインホフの葛藤が痛かった。
知的な彼女が「ものを書くだけでは何も変わらない」との言葉に共感し
過激派活動を行うようになり、いつしか無差別に人を殺してしまうテロリストになるのですよね。
ミュンヘンオリンピックで選手村の選手が殺された黒い9月事件にも彼らと関わりがあったことも知りませんでした。
彼らを支持する若者が次々にグループに加わっていくのも怖い。

若者の理想がゆがんでいく様子は辛く、その結末も悲惨です。
過激活動の様子を緊張感あふれる迫力映像で描いていて、見ごたえもあり
知っておくべき歴史的なこととして、観てよかったと思う作品でした。

昨年のアカデミー外国語映画賞にノミネートされてました。