しまんちゅシネマ

映画ノート

ザ・コーヴ


2009年(米)監督:ルーイー・サホイヨス出演:リック・オバリー/ルーイー・サホイヨス/ヘイデン・パネッティーア/イザベル・ルーカス

アカデミー特集 長編ドキュメンタリー賞受賞『ザ・コーヴ

■感想
この作品がアカデミー賞で世に知れるようになることを、一部の日本人の方は快く思っていないことでしょう。
是が非でも回避したかったことかもしれません。
正直私も、これを記事にすることを、日本人としてためらいもしました。

このドキュメンタリーで描かれるのは、和歌山県太地町におけるイルカ漁について 
イルカ? そんな漁があるの? と驚くでしょう。

どうやら世界のイルカショーで華麗な姿を見せてくれるイルカたちは、ここで捕獲され、輸出されているようなんです。
問題なのはその捕獲手段。捕鯨の古式漁法に乗っ取り、イルカを音で混乱させ、入り江に追い込みます。
ショーに使えそうな何頭かを選び、他は殺され食用に。
その数は年間23000頭にのぼると、ドキュメンタリーでは語っています。

ドキュメンタリーの主役となるリック・オリバーさんは、かつての人気ドラマ『フリッパー』にも出演し
イルカの調教をしてきた方。言葉はなくともコミュニケーションはできる。心からイルカを愛する人なんですね。
ある時から彼は、人間のために捕獲されショーを演じるイルカたちのストレスを目にし
それまでの仕事を辞め、危機状態にあるイルカの救出に全精力を尽くすことになります。
そんな彼は年間23000頭というこの惨殺を許せるはずがない。

映画はリックさんに賛同する人々が、太地町のイルカ漁を撮影
太地町のガードは固く、彼らは警察に追いかけられ、役所の人から注意され、はたまた漁師から撃退される中
ついにその決定的瞬間を撮影するために、撮影機材を仕掛ける様子などがスリリングに描かれます。

殺されるイルカたちの血で入り江(cove)が真っ赤に染まるシーンでは言葉を失いますよ。
ホラー映画並みです。



それにしても何故こんな大量のイルカを殺さなければならないのか
国はイルカは大量の魚をたべる海のペストだとして、駆除するのだと言うけれど、それって人間のエゴ。
しかもこの街ではイルカを鯨の肉と表示してスーパーで売っています。
このイルカの肉が問題で、大気汚染の影響か、イルカの肉には通常より高濃度の水銀が含まれるのだそうで
製作側は第二の水俣になりえるとさえ言います。

国際捕鯨委員会の問題についても示唆していますが・・、はぁ、やっぱり見ていて辛いものがありました。

日本には本当に痛い映画ですよ。
国際的に保護されている鯨を食べることを、それが自分たちの食文化として理解して欲しいという考えは
果たして通用するのでしょうか。
ましてや住人も欺いて、水銀に汚染されたイルカを食卓に提供している実態。
リックさんたちの説明により、議員が動き、学校給食からはイルカ肉が姿を消したのだそうです。

勿論この作品には事実を間違えて伝えているとして太地町は猛反発。
でも映像を見る限り、イルカ漁の実態は明らかだし、
なんと言っても多くの日本人が、事実を隠蔽され正しいことを知らされていないのならそれは問題。

そういう意味で、ショックは受けるものの見て良かったと思う作品でした。

日本でも公開の予定はあるようですが、公開するとなるとかなり編集が必要かもしれません
だって漁師の皆さんのお顔など普通に見れますから。。

イルカってね、自分で命を絶つこともあるんですって。
意図的に呼吸を止めて。。。



★★★★☆


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