しまんちゅシネマ

映画ノート

 
   
1971年(イギリス)
監督:ジョセフ・ロージー
出演:ジュリー・クリスティ/アラン・ベイツ/ドミニク・ガード/マイケル・レッドグレーヴ
 

 
■感想
L・P・ハートレイの小説『恋を覗く少年』をもとに『パリの灯は遠く』のジョセフ・ロージー
少年が体験した初恋のほろ苦い思い出を描く思春期映画の傑作
【ストーリー】
お金持ちの友人マーカスの邸宅で夏休みを過ごすことになった12歳の少年レイは
マーカスの姉マリアンに一目ぼれ。
ところがマリアンは貧しい農夫のテッドと密かに逢瀬を重ねる仲で、
レイにテッドへの手紙を委ねるのだった。。
 
12歳の少年レイ(ドミニク・ガード)は、美しいマリアン(ジュリー・クリスティ)に夏服をプレゼントされ浮かれちゃいました。
マリアンと会話するときには、目いっぱい背伸びして大人ぶるのが可愛くて笑えます。
マリアンに手紙を渡すことを頼まれ、仕事の関係の手紙と信じパシリを努めるレイ
恋するマリアンの役に立つのがただただ嬉しかったんだよねぇ。
ところが、ある日封をされてない手紙を衝動的に盗み読みしてしまったレイは、
それが恋の手紙であることを知ってしまいます。
そしてマリアンに子爵の婚約者がいることを知り、ますますレイの心は揺れるのでした。
 
これは一環して、年老いたレイの回想として語られるのですが
富豪の娘と貧しい小作人の恋が、少年の心にどれだけ大きな傷を残したかと思うといたたまれないです。
しかも数十年たった今も、その傷に塩を塗りこむような行為をするマリアンにはちょっと驚くのだけど、
この夏の出来事は、マリアンにとっても一生抱えなければならない悲しみを生み
彼女にしてみれば、少年は「生涯悲しみを共にするしもべ」でなければならなかったのかもしれません。
 
貧富の差を超える大人の恋により、思春期の少年が生涯癒えない傷をもつと言う点で
『つぐない』に共通点を感じるところでした。
 
思春期の夏を、時に甘美にときに残酷に描きあげた本作は、ミシェル・ルグランの奏でる少々大げさ気味な音楽とともに、観るものの心を揺らします。
 
英国アカデミーでも8部門にノミネートされ、脚本賞、新人賞、助演男優、女優賞を受賞しています。