しまんちゅシネマ

映画ノート

エレファント


2003年(米)
監督:ガス・ヴァンサント
出演:ジョン・ロビンソン/アレックス・フロスト/エリック・デューレン/イライアス・マッコネル/ジョーダン・テイラー
ティモシー・ボトムズ


■感想
映画で妄想 世界の旅!7本目
前回はモーガン夫妻を追ってワイオミングに行ったので、今日は足をアイダホを跳び越してオレゴン
オレゴンではポートランドがよく映画の舞台として使われますが
ポートランドと言えばポートランド3部作なんかも撮っているガス・ヴァンサントが思い浮かぶところ。
本作もコロラド州で起きたコロンバイン高校銃乱射事件ポートランドの高校に置き換え
その惨劇を映像にしています。
 
映画は事件の朝に向かう高校生たちの日常を、時間軸を交差させながら描く作り。
高校生の頃って、何かに不満を感じていたり、ちょっとしたことに傷ついたり・・
映画が始まってしばらくは、それぞれの若者の様子が淡々と描かれるのだけど
この中の誰かが事件を起こすのだと思うとひやひや。

言い換えると、途中まで誰が犯人なのか分からない
何故なら事件を起こした学生もそれほど大きな悩みを抱えていたわけでもなく
彼らの憂鬱は他の学生となんら変わらない類のものだから。
だからこそ怖いと思った映画でもありますね。


大きなきっかけもないのに、テレビゲームのノリで人を銃殺する
あんな銃器が、メールオーダーで簡単に手に入るのかと思うと、それもまた恐ろしい。
犯人の動機にも深く迫らないのは、誰にでも起こりえることだからか。

誰もが逃げ惑う犯行の瞬間に、一人現場に向かってしまう黒人学生が印象的だったけど
あれは何故だったんだろう。
銃声に引き付けられるように無防備に死に向かう、
何故か魅せられる、、犯人の学生に通じる心理なのかもと思ったり。
 
映画に登場する子供たちは全員オーディションで選ばれた素人で
それぞれの実名で、高校生の日常を自然に演じています。
 
犯人役の二人にキスをさせるのも
少年たちが女の子よりもピュアで美しいのも、ガス・ヴァンサントらしいところかな。
少年の奏でるエリーゼのためにと青い空が心に沁みました。
 
カンヌでパルム・ドールと監督賞をダブル受賞