しまんちゅシネマ

映画ノート

ザ・シャウト/さまよえる幻響

 
 
イエジー・スコリモフスキ監督新作『エッセンシャル・キリング』がまもなく公開ということで、
カウントダウンが始まりました。
ということで、今日はカンヌ映画祭で審査員賞を受賞した日本未公開作品『ザ・シャウト/さまよえる幻響』。
奇妙な味わいのホラーサスペンスです。
 
ザ・シャウト/さまよえる幻響 (1978) イギリス
監督:イエジー・スコリモフスキ
出演:アラン・ベイツスザンナ・ヨークジョン・ハート/ロバート・スティーヴンス/ティム・カリー

【ストーリー】
精神病院で開催されたクリケット大会にスコアラーとして参加したアンソニーは、奇妙な患者と知り合う。
その男は、自分は叫び声で相手を殺す事が出来ると言うのだが……。(aiicinemaより)
 
イエジー監督と言えば、同じポーランド出身のポランスキーのデビュー作『水の中のナイフ』の脚本を手がけたことでも有名でしょうか。
その後『身分証明書』(1964)で監督デビュー。
俳優としても活躍していて、
イースタン・プロミスで、ナオミ・ワッツの叔父ステファンを演じてたのが監督だったのね。
 
さて、本作ですが、まさに「叫び」で人を殺せると嘯く男を描く、なんとも奇妙なお話なのです。
 
まず、精神病院で行われるクリケット競技のスコアラーとなった男に
ある男が「自分は叫び声で相手を殺すことができる」と話し、回想シーンへと続きます。
 
 
場面変わって、砂漠で転寝する若い夫婦は
手に先の尖った、骨のようなものを持った男に襲われる夢を見て目覚める。
楽家である夫アンソニージョン・ハート)は、教会のオルガンを演奏した帰りに、
クロスリーアラン・ベイツ)と出会う。
不吉な夢がまるでその前兆であったかのように
クロスリーは次第に夫婦の生活に入り込み、同居するようになるのですが
ある日、クロスリーは「自分は太古の力を身につけ、叫びで人を殺すことができる」と話すのです。
 
迷惑な男が、夫婦の暮らしを侵食していくというお話しかと思ったら
これが、そう簡単に片付けられない。
図々しく家に入り込むクロスリーを、毛嫌いしていたはずの妻レイチェル(スザンナ・トーク)は
気づけば夫アンソニーを邪険に扱い、クロスリーと身体の関係にまでなっているのよね。
 
なんで?と思うところだけど、レイチェルの無くした靴のバックルをクロスリーが持っていたり
意思を操るツールのように描かれているのが面白い。
 
 

アンソニー夫婦の家に飾っている絵にしても、なんとも不気味で
レイチェルが絵と重なると思えるシーンには、ゾクっ・・
 
そしてなんたって圧巻なのが
クロスリーがアンソニーを砂漠に連れ出し、自分の能力を披露するシャウトシーン!!
応援団長か!? のシャウトに、羊も人もバタバタと倒れる!!(笑)
耳栓をして臨んだアンソニーも砂漠の傾斜を転げ落ちる
まさに目がテン。
 
冒頭の場面が繰り返されるラストシーンは謎の回収を図るものでした。
と言っても、映画は親切に説明をしてくれるわけではないので
登場人物の関係に、自分なりの推論をめぐらすことになり
だからこそ、面白い。
 
自分自身、悪夢にさらされたような余韻がたまらない作品でした。
 
 
明日は久々しりとり。
「む」から始まる、イエジー監督作品だよん。