しまんちゅシネマ

映画ノート

悪の華


 
今日は久々にシャブロル。
カルさんもお気に入りでしたよね。
 
悪の華 (2003) フランス
監督:クロード・シャブロル
出演:ナタリー・バイ/ブノワ・マジメルシュザンヌ・フロン/ベルナール・ル・コク/メラニー・ドゥーテ
 
4代に渡り姻戚関係を続ける二つの名家をめぐる、因縁のサスペンスです。
 
冒頭、カメラは時代を感じさせる車の停まった邸宅に入り、中をゆっくりと移動。
階段を上ると、ベッドルームに横たわる男の死体を映し出す。
 
場面変わって、ボルドー・メリニャック空港。
3年いたアメリカから帰国したフランソワ(ブノワ・マジメル)を、父のジェラール(ベルナール・ル・コック)が迎える。ジェラールの再婚相手であるアンヌ(ナタリー・バイ)は、市長選に出馬のため忙しく迎えにこない。
そんなアンヌをジェラールは気に入らない。
フランソワはアンヌの連れ子ミシェル(メラニー・ドゥーテ)がいる。
義理の兄妹でありながら、互いに特別な思いを抱く二人を
一家とともに暮らすおばのリーヌ(シュザンヌ・フロン)は、静かに見守っていた。
一見平安に満ちた家族に、アンヌの選挙を妨害する1枚の中傷ビラが届けられる。
それはアンヌの家族にまつわる殺人事件に関するものだった……。
 
 
4代に渡り姻戚関係を続ける2つの名家の・・と書いたように
この物語はフランソワの世代から遡り、父と母と、フランソワからするとおじいちゃんや
その上の世代の因縁が絡むお話です。
 
映画が進むにつれ、冒頭のシーンがどんな事件であったのかが判ってくるのだけど
現代に生きるフランソワとミシェルの物語にどう絡んでくるのかと、興味津々で観ることになりました。
 

実はこの2つの名家の姻戚関係というのがえらく複雑で、どうやら色んな近親相姦を続けてきた様子。
そもそもおばは兄と恋人関係にあった人。
アンヌの夫はそもそもジェラールの兄弟で、何故かジェラールの妻と一緒にいて事故死・・
ミシェルとフランソワは実は血の繋がった兄妹か ってな話になってくる。
3年間離れてはみたものの、再会した二人はやはり惹かれあう。
そして別荘で二人過ごしあと、そこで新たな事件発生となるのです。
 
振り返ってみれば、邸宅をなめるように進んだ冒頭のカメラ目線から
この映画では「家」に意思を感じるのですよ。
おばと兄が愛し合ったことも、父母たちとの関係も
そしてフランソワとミシェルの関係も、すべてこの家の因縁が引き起こしたことのように見えてくる。
序盤では、家族が集うシーン、何故か唐突にカメラが引き、ミシェルとおばを
インテリアの鳥かご越しに映し出す。
まるで二人が籠に入った鳥のように見えるそのシーンに何があるのか。
後半、その答えを知った瞬間、ある種のカタルシスさえ感じます。
 
でもあのラストはなんだろな。
事件が起きた後なのに、華やかな祝賀パーティに突入(笑)
事件の処理中にちょっとした弾みで笑いあうシーンも印象的だったし。
色々あってもしたたかに生き抜くブルジョワたちの、能天気なたくましさを描きたかったのか。
それもシャブロルらしいところでしょう。
個人的には、こんな因縁劇は終わりにしようと、家が静かに赦しを与える。。だといいなぁと思います。
 
DVDには、特典に二つの家族の家計図が添えられていました(笑)
私が本作に邦題をつけるなら『ファミリー・ツリー』ですね。
あ、クルーニー新作と被ったw でも絶対こっちの方が合ってるって(笑)