しまんちゅシネマ

映画ノート

アーティスト



サイレント映画からトーキーに移行する1927年から1932年までのハリウッドを舞台に
時代の変遷とともに生きるスターを描くフランス映画です。
主演のジャン・デュジャルダンは、ゴールデン・グローブ 主演男優賞はじめ、数々の賞に輝き
頭一つリードの印象ですね。

アーティスト(2011)  フランス
監督:ミシェル・アザナヴィシウス
出演:ジャン・デュジャルダン/ペレニス・ベジョ/ジョン・グッドマンジェームズ・クロムウェル

技術革新というのは、時に残酷なもので
フィルムしかり、忘れ去られるものには哀愁を感じますね。
この映画の主人公サイレント映画の大スター ジョージ・ヴァレンタイン(ジャン・デュジャルダン)も
トーキーの到来とともに、時代に取り残されてしまいます。
演じることが好きでたまらないヴァレンタイン。さて、彼の運命は・・・ 。

本作はご存知のように、ほぼサイレントなんですが
実はちょっとしたサプライズがあり、私たち観客も当時の人が味わったであろう
驚きや感動を追体験することになるんですね。映画の作りかたが上手いですよ。

オスカー有力視されるジャン・デュジャルダンは、ちょっとクラシカルな雰囲気を持った役者で
サイレント時代のスター、ヴァレンタインはまさにはまり役。
切れのいいパフォーマンスと、顔面技とも言えるwその表情には見てる方もつい笑顔。

ただ、見終わって思うのは、思ったよりもコメディよりだったなということ。
そして笑いの一番の担い手が犬だったのにはちょっと驚きで、ワンちゃんは芸達者で
最高に可愛いのだけど、少し犬芸に頼りすぎじゃね?とは思いますね(笑)

あと、あるショッキングなシーンで、同じ列にいたおばちゃんが「オゥオゥオゥ!!」と
叫び声をあげたんですが
その原因となるところの顛末がちゃんと描写されてないもんだから
おばちゃんも感情の収めどころに困ったはず。

何かね、意外に詰めが浅いというか、真剣さが足りないというかw
役者のキャラを活かしたエンタメ作品を作ったら、思いがけず話題作になっちゃった
そんな気がしてならないw

とはいえ、新人女優を演じるペレニス・ベジョも器用なところを見せてくれて
デュジャルダンとのパフォーマンスは最高にエンターテインメントしています。
サイレント時代の大スターが時代が終わっても、自分の愛するサイレント映画固執する。
結果破産の憂き目にあうのだけど、秘かに助けるのがヒロイン
二人とも私財をはたいてでも愛するものを守ろうとするところが同じ
それはきっと、毎回ジャンや奥様のペジョとともに、自分たちの求める
究極のエンターテインメントを目指そうとする監督の精神に通じるのでしょう
今回それが見事に花開いたというベきでしょうね

フランス映画でありながら、初期のハリウッドを描いている本作と
アメリカのスコセッシがフランス映画元祖を描く『ヒューゴの不思議な発明』、
エール合戦のような2本が作品賞を競いあうことになるとは、なんたる偶然。面白いですよね。

笑いあり、涙ありで時代を映すエンタメ作品としては一級。だけどもう少し深みが欲しかった。
個人的には大感動の『ヒューゴ~』に軍配でした。

日本公開は4/7~