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映画ノート

【ネタバレ感想】 複製された男

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複製された男
(2013)カナダ・スペイン
原題:Enemy 監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演:ジェイク・ギレンホールメラニー・ロランサラ・ガドン ヘレン/ イザベラ・ロッセリーニ
日本公開:2014/7/18
  【ストーリー】大学で歴史を教えるアダム(ジェイク・ギレンホール)はある日同僚に勧められた映画の中に自分と瓜二つの役者を発見。エンドクレジットからアンソニーと言う男のことを知ったアダムはアンソニーとじかに会って、顔や声、身体の傷まで同じであることに驚愕する。

自分にそっくりな男を見つけてしまった大学講師の混乱を描く心理サスペンスジョゼ・サラマーゴの原作を『灼熱の魂』     『プリズナーズ』のドゥニ・ヴィルヌーヴが映画化しました。
とにかく難解と評判ですね。
ジェイク演じるアダムが遭遇することになるアンソニー(ジェイク 二役)とは何者か。
途中何度か登場する蜘蛛が意味するのは何か など解明すべきポイントがいくつかあります。
「講義の内容にもヒントがありそう」と聞いていたので、自分なりに楽しみながら解釈してみたし DVD特典の監督インタビューなども助けにはなったものの、全容解明には至らず(汗) youtubeのネタバレ解説を見ちゃいました。
以下投稿内容に沿って謎を明かしていこうと思います。 ネタバレにつき、未見の方はご注意ください。
 

まず、アダムとアンソニーの関係は何か。身体の傷まで一致ということで、同一人物と仮説を立てましょう。 混乱を避けるため、動画にならって以下講師ジェイク俳優ジェイクと表記することにします。

 

講師ジェイクは地味で暗め。
メラニー・ロランと恋人関係にあるけれど、どうやらその関係は冷えかけている。
一方俳優ジェイクは髪型も決まっていて、高そうな服を着ている。
妊娠中の妻(サラ・ガドン ヘレン)がいて、結婚指輪をしているけれど、妻の台詞から浮気をした過去が見えてきます。 
 
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冒頭、鍵を持ってデートクラブのようなところにいるジェイクは指輪をしていることから俳優ジェイクでしょう。
彼の目の前には蜘蛛がいて、ハイヒールの女性が蜘蛛を踏み潰す・・ 画面変わって大学の講義風景。

レクチャー中の講師ジェイクの最初の台詞は「コントロール」各々をいかにコントロールするかという話の中、
重要なこととして、「これはパターンであり繰り返すのだ」と言っています。
 
その後、同僚に勧められた映画を探しにレンタル店に行く講師ジェイク。
このレンタル店のポスターが『ジャイアント・ウーマン』、BGMが『The Cheater(浮気する者)』なのも要チェック。
 
蜘蛛がどういったシーンに使われているかも重要で細かく見てみると、
俳優ジェイクが妻と言い争った後や、講師ジェイクが母と会話した後になっています。

つまり蜘蛛は女性のメタファーであり、妻の妊娠により自由を奪われ、家庭に責任を持たなければいけないことへの恐れの象徴。 俳優ジェイクは講師ジェイクの恋人であるメラニー・ロランに興味を示すんですね。
明らかに悪い癖が再発していることを妻は感じ取っている。
この後、俳優ジェイクは講師ジェイクになりすまし、メラニー・ロランとベッドを共にするのですが
講師ジェイクではないと気づいたメラニーにより拒否されます。

車の中で言い争いを始める2人。
結局大変な事故を起こすわけですが、車の窓の割れ具合が蜘蛛の巣状だったのに気づいた人も多いでしょう。

では仮説に戻って、なぜ2人は同じ人物なのか。
言い方を変えて、なぜ別のジェイクを生み出す必要があったのか・・ 

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それは終盤、俳優ジェイクの妻が講師ジェイクを夫として振舞っているところが鍵になりますね。
俳優ジェイクの妻と思ったのは実は講師ジェイクの妻であり妻の妊娠を機に自由を奪われようとしているのは講師ジェイクであるということ。その大きすぎるストレスが生むのが、彼の内なる欲望を具現化した俳優ジェイク
講師ジェイクなりに彼の内なる欲望を排除しようとした結果があの事故とも言えるでしょうか。

欲望をコントロールしようと努力するも、結局は排除しきれず、またしてもデートクラブに行こうとするジェイク。
コントロールの言葉虚しく浮気を繰り返すのが彼のパターン
妻への罪悪感と恐れがラストシーンを見せてるんでしょうね(笑)

ちなみに女性の頭が蜘蛛だったり、巨大な蜘蛛が街を歩いていたりするのは、女性=蜘蛛の象徴であると同時に、
この映画はなんでもありという警告でもありますね。

本当は好きなブルーベリーを嫌いと言ってみたり別人格を生み出すところに、講師ジェイクの精神がかなりヤバイレベルに混乱しているのが窺えます。原題のエネミー(敵)は悪癖を繰り返すジェイク本人。全ては講師ジェイクの頭の中の妄想。

そう言うとつまらないと思われそうだけど、実に緻密に作り上げられた知的な作品だと思います。
ちなみに、巨大蜘蛛が現れるのは母親(イザベラ・ロッセリーニ )と会話した後。
巨大蜘蛛は息子を支配する母を象徴するものと言う描き方ですが・・監督はお母様や奥様が怖いのかな はどうでもいいかw

長文駄文失礼しました。