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映画ノート

【映画】『わが心のボルチモア』



わが心のボルチモア(1990)アメリ
原題:Avalon
監督:バリー・レヴィンソン
出演:アーミン・ミューラー=スタール/ ジョーン・プロウライト/ エイダン・クイン/ レオ・ヒュークス/ エリザベス・パーキンス/ ルー・ジャコビ/ イヴ・ゴードン/イライジャ・ウッド / トム・ウッド
1914年、アメリカン・ドリームを胸に東欧からやって来たサム・クリチンスキー。壁紙職人としてボルチモアに定住した彼は、息子ジュールスやかわいい孫に囲まれ、幸せな生活を送っていた。そんなある日、ジュールスが経営するデパートが全焼してしまい……。



レインマン』のバリー・レヴィンソンが故郷ボルチモアを舞台に、東欧移民してきたユダヤ人家族の三世代に渡る歴史を描くヒューマンドラマです。

監督のバイオグラフィーを見るとお母さんの姓がクリチンスキーなんですね。
ロシア系移民二世の監督にとって、本作は半自伝的な作品なんでしょう。

サム・クリチンスキーにアーミン・ミューラー=スタール
サムが初めて地を踏む独立記念日に沸くアメリカの冒頭シーンの美しいこと。

時は流れ、息子一家と穏やかに暮らサムのある感謝祭の食卓
昔語りを始めるサムに「また同じ話。みんなもう聞いて知ってるわ」と妻のエヴァジョーン・プロウライト)。
いづこも同じ(笑)
さらに「そもそも感謝祭ってなんなのかしら。何に感謝を捧げるの?」とエヴァ
映画が終わる頃には感謝祭の意味を噛み締めることになりました。




映画はサムと息子一家に起こる出来事を淡々と映し出すんですが
これがどこの家庭にもありそうな「あるある」含みで、ニヤニヤがとまりません。



時代の描き方も絶妙で、初めて一家にテレビがやってきたシーンには笑ったし
空とぶスーパーヒーローの映画に観客が歓喜するシーンにはワクワク。
悲喜こもごもなれど、時々を懸命に生きる一家
やがて歳を取り、サムの中から記憶がひとつずつ消えていく様子には寂しさを感じますが
ラストシーン、大人になったサムの孫サムが自分の子供サム(みんなサムw)に曾おじいちゃんのことを話して聞かせるラストシーンに、こうして家族の歴史は語り継がれるんだなぁとしみじみ。
ちなみに監督の息子もサム(『アナザー・ハッピーデイ ふぞろいな家族たち』のサム・レヴィンソン)です。

家族には大切な歴史がある。
家族が集まって、昔語りを聞き、祖先に感謝することも感謝祭のあるべき姿なんでしょうね。
日本に置き換えればお盆やお正月かな。

今回、ユダヤ人映画特集の一環でテレビ放送されたんですが、舞台がアメリカということもあり本作にはホロコーストのシーンは全然出てきません。しかし移民してきた少女が夜中に悪夢にうなされて大きな声を出したり、サンクスギビング七面鳥をオーブンに入れるシーンにホロコーストの会話を重ねてみたり、印象的な演出が見受けられます。

「思い出そうとしなければ忘れてしまう」という台詞も印象的。
家族映画であると同時に、ユダヤ人虐待の歴史も忘れてはいけないと語る映画だと思います。



息子ジュールスにアイダン・クイン、子供時代の孫のサムにまだあどけないイライジャ・ウッド
この年のアカデミー賞では脚本賞など4部門にノミネート
ノスタルジックな音楽と映像が心に染みる珠玉のヒューマンドラマです。
大好きな映画がまたひとつ増えました。

画質悪いですがトレイラー貼っておきます。