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映画ノート

【映画】『ブルー・リベンジ』



アカデミー前哨戦の結果も続々発表されていますので、気になるところからチェックします。

ブルー・リベンジ(2013)アメリカ/フランス
原題:Blue Ruin
監督:ジェレミー・ソルニエ
出演:メイコン・ブレア/ デヴィン・ラトレイ/ エイミー・ハーグリーヴス
日本公開:2015/2
 
まずは、昨年のカンヌで国際批評家連盟賞を受賞、前哨戦ではナショナル・ボード・オブ・レビュー賞のインディ映画トップ10入りを果たした『ブルー・リベンジ』を



冒頭、入浴中の男が物音に気づくや、振りチンのまま窓から脱出!
よそ様のお風呂を勝手に拝借してたのか?
その後、住処とするオンボロ車でまどろむ彼は、女性警官に同行を求められる。
不法侵入を咎められるのかと思いきや、警官は男にある人物が出所することを告げる




ジェレミー・ソルニエが監督、脚本、撮影を務め、監督の親友でもあるメイコン・ブレアが主人公のドワイトを演じる低予算リベンジスリラーです。

これね、「元玄人を怒らせたら怖いよ」という『ジョン・ウィック』や『96時間』シリーズとは対極にある作品でして、ある人物に復讐しようとする主人公が、ズブの素人のホームレスというところが面白い一本になってます。

ドワイトは、ある人物が出所することを知るや、にわかに身の回りを整え始めるんですが、この間殆ど台詞がない。そのため主人公の行動の真意を映像から読み取ることになり、これがなかなか面白い作業でした。
彼がホームレス生活を余儀なくされるのは、おそらくはある事件のショックで精神を病み、社会的弱者になってるんだろうと思うんですが、その説明はありません。
とにかく全編に渡って台詞が少ない中、観客は予測不能の主人公のリベンジを固唾を呑んで見守ることになるんですね

ショッキングなシーンも挟み込まれるものの、殺しの達人でも何でもない主人公の行動はときにシュールで笑えてしまいます。武器オタクの友人にも笑えたし。
ユーモアとバイオレンスのバランスが絶妙なところは、タランティーノやコーエンの作風に通じるものがあるかな。

復讐を決心した男が淡々とことを実行に移す。
本当にそれだけの映画ですが、ラストに向け加速する緊張と、その中で静かに描かれるヒューマンドラマが光る一本でした。ドワイトを演じたメイコン・ブレアの「本当に具合悪いでしょ?」と聞きたくなる迫真の演技も見もの。
ハリウッド作品のようなものを期待すると、スローで地味ということになるかもだけど
インディーズらしい味わいの秀逸スリラーでした。
トマトメーター96%!

<未体験ゾーンの映画たち2015>での上映が予定されています。