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映画ノート

【映画】成功の甘き香り



成功の甘き香り(1957)アメリ
原題:Sweet Smell of Success
作品情報

あらすじ
ニューヨークで最も影響力のある劇評コラムニストであるJJ・ハッセンカーは、妹のスーザンがジャズ・ミュージシャンのスティーヴと交際するのが気に入らず、プレス・エージェントのシドニーを使って二人の仲を裂こうとする。

トレーラー
成功の甘き香り [DVD]

感想

『バードマン』が公開になりご覧になった方も多いと思います。
アカデミーを獲ったにしては、単純な解釈を許さない玄人向けの映画ゆえ、賛否も分かれてる様子。だろうなぁ。
今日観た『成功の甘き香り』は『バードマン』と少し共通点がありました。

バート・ランカスター演じるJJ・ハッセンカーはNYのトップ劇評家。
『バードマン』で女性コラムニストのタバサが、キートンの劇を観る前から酷評するなどして悩ませていたけれど、本作が制作された時代は当然ながらネットによる口コミなどはないわけで、新聞のコラムの影響力は現代以上に絶大だったことでしょう。




冒頭、夜も明けやらぬニューヨークの街に朝刊が配送されるや、いち早くコラム欄をチェックするシドニートニー・カーティス)。彼は新聞を一瞥すると舌打ちして捨てる。
JJに取り入り、仕事のおこぼれに与る彼は、このところコラムから締め出されている。
それは「妹スーザンとジャズバンドのギタリストを別れさせろ」というJJの命令を実行に移せてないから・・。


劇評界の大物にランカスター、その腰巾着にトニー・カーティスを据え、ショービズ界のダークな裏側を描き出した本作。
コラムニストの評価は舞台の成功を左右するわけで、特権を利用し影でショービズ界を思い通りに動かすギャングまがいのJJをランカスターが憎々しく演じてます。


一方、カーティスは駆け出しながらJJを利用し頂点に上り詰めることを夢みるシドニーを好演。野心家で小悪党ではあるけれど、心の奥底には良心のかけらを残すシドニーが、「成功の甘い香り」にほだされるところが見もの。敵対しつつも互いを必要とする2人の台詞回しも痛快です。


↑新人女優の前でJJにボロクソになじられても、この顔で耐えるしかないシドニー

実はつい最近『空中ブランコ』というへんてこな映画で競演するランカスターとカーティスを観ていたのもあって、2人のやりとりにニマニマしちゃったな。
いつタイツ姿になるのか・・なんちゃってw

『バードマン』では、鼓動のように、時には不安を煽るように鳴っていたジャズのドラム音が、本作では「それでもやる!」という男の決意を表すように響いてカッコいい。
ブロードウェイ界隈の喧騒も『バードマン』と同じ。
シニカルで悪徳だと思っていたJJが本当に望んでいたのは妹の幸せ。
?
異常な愛しかたではあったけれど、毛皮のコートを脱ぎJJの元を去るスーザンを静かに手放す姿は切なくもあった。

モノクロ映像で撮影された夜のNYが美しい映画でした。



ランカスターの役にはモデルがいたらしいですね。
今では名作と言われる本作が当時あまり評価されなかったのは、映画の世界そのままにモデルとなった大物コラムニストに酷評されたからだったりしてね。