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映画ノート

【映画】ハスラー2

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【作品情報】
ハスラー(1986)アメリ
原題:The Hustler
監督:マーティン・スコセッシ
脚本:リチャード・プライス
出演:ポール・ニューマン/ トム・クルーズ / メアリー・エリザベス・マストラントニオ/ ヘレン・シェイヴァー / ジョン・タートゥーロ / ビル・コッブス/ ロバート・エイギンス/ アルヴィン・アナスタシア


【感想】
ハスラー』の続編となるマーティン・スコセッシ監督の『ハスラー2』です。


あれから25年。
かつてハスラーとしてならしたエディ(ポール・ニューマン)も、今は現役を退き、酒の販売などで生計をたてつつ、時にはハスラーの胴元として賭けを楽しむ中年男となっている。
そんなエディの目に留まるのが、抜群の腕を持つヴィンセント(トム・クルーズ
ヴィンセントに自分の姿を重ねたエディは、彼を一流のハスラーに育てるべくマネージメントを買って出る。
ヴィンセントの恋人カーメンも同行し、トーナメントの行われるアトランタを目指すのだが・・・



これね、『ハスラー』から間を置いて観たらば素直に楽しめたかもしれない。
変な髪形でお調子者なハスラーを演じるトム・クルーズの教育に四苦八苦しながら
やがて自分の情熱を蘇らせるニューマン。二人の攻防は見ごたえがあります。

でも『ハスラー』のエディに感情移入し、苦いラストの余韻を引きずったまま見ると、納得できないところが多すぎてね。

まず、ハスラーの裏世界から追放されたエディが、その後もハスラーの胴元(っていうの?)みたいなことして今もビリヤード場に出入りしてることに「あ、そうなん?」ってなるし
痛い過去を引きずるはずのエディが、ハスラーとしていかに賢く(汚く)金を稼ぐかをヴィンセントに教えることにも違和感を感じてしまった。

勿論好きでハスラーの世界を捨てたわけではない。
エディの中には沸々としたビリヤード愛があっただろうことは分かるんだけど、出来れば死んだサラや盟友ファッツのことなどに触れるなど、悔恨の念をもう少し表現して欲しかったとも思ってしまった。
まぁ、ビリヤード場を舞台にすることがこの映画の醍醐味であり、スコセッシは、エディの再起を新しいビリヤード映画として描きたかったのでしょうけどね。
全てはマネーゲームとしてのビリヤードの楽しみ方を理解してない私自身の問題かもです。

ヴィンセントを演じるトム・クルーズは青くダサいヴィンセントを好演してます。
ヴィンセントがお金に執着がないことを彼が一銭にもならないゲームの攻略に夢中になるところに垣間見せる演出もよし。そんなヴィンセントをハスラーとして教育する過程のニューマンとクルーズのデコボコ師弟劇は面白い。


しかし、マネーゲームの駆け引きよりも力を出し切ることに真剣になるヴィンセントがやがてエディを変えることになり、ヴィンセントのゲームに25年の思いをめぐらせるニューマンの表情がいいんですよね。
歳をとってもその後の人生において今日が一番若いんだというのはいつも思うことで
後悔するより挑戦してみようとするエディの姿に多くの中年が勇気を貰ったことでしょう。

ただ個人的にはせっかくならヴィンセントはビリヤード馬鹿のままでいて欲しかった。
予測不能の展開も面白さだとは思うものの、見ていて何度も「そっち?」と期待を裏切られました。
こういう映画も珍しい(笑)
映像もスタイリッシュでよかったし、ニューマンがこれでオスカーをゲットしたのも嬉しい。
ただ、どうしてももう少し前作への愛が欲しかったな。



ところで、ひとつ疑問に思うところがあるんですが・・

フォレスト・ウィテカー演じるアモスがエディに「お前はハスラーか?」と訊かれて
それには答えずゲームを終えて立ち去る前に「もっとやせたほうがいいかな?」とエディに訊くシーン
あれはミネソタ・ファッツを意識してるとする意見をいくつか目にしたのだけど、本当のところはどうなんだろう。
デブのファッツ=ハスラーで、ファッツを思い起こさせることで自分はハスラーだと暗に答えているという意見も分からなくはないけど
なんだか作りこみに感じるし、アモスがファッツとエディの攻防を知ってたかも疑問。

個人的には単純に「お前はハスラーか?」のイエスの答えの代わりに
「もっとやせたほうがいいか?」と訊いて「イエス」の答えを誘導したと考えるほうが自然じゃなかろうか。