しまんちゅシネマ

映画ノート

【映画】アノマリサ

anomalisa.jpg

アノマリサ(
2015 アメリ
原題:Anomalisa
監督:デューク・ジョンソン/チャーリー・カウフマン
脚本:チャーリー・カウフマン
声の出演:デヴィッド・シューリスジェニファー・ジェイソン・リー/トム・ヌーナン

【あらすじ】
カスタマーサービス界で名声を築き、本も出版しているマイケル・ストーン。私生活でも妻子に囲まれ恵まれた人生を歩んでいるかに見えたが、本人は自分の退屈な日常に不満を募らせていた。そんなある日、講演をするためシンシナティーを訪れたマイケルは、そこでリサという女性に出会う。長い間、すべての人間の声が同じに聞こえていたマイケルは、「別の声」を持つ彼女と特別な夜を過ごすが……。

【感想】
 英エンパイア誌選出2016年のトップ25から、14位にランクインの『アノマリサ』を観ました。
今回全編ネタバレで感想を書いてますので、未見の方はご注意ください。


いわゆるストップモーションアニメの手法で作られた本作は、共同監督&脚本を『マルコヴィッチの穴』『エターナル・サンシャイン』の脚本家チャーリー・カウフマンが担当しています。

New-Anomalisa-Clip-Shows-David-Thewlis-Character-Landing-in-a-New-Life.png


冒頭、聴き慣れた機内放送が流れ、主人公マイケル・ストーンを乗せた飛行機は目的地シンシナティに到着する。
乗客の声は重なり、話の内容は聞き取れない。
ホテルに着いたおっさんマイケルは家に電話し、妻や息子と話すのだけど・・
ここで違和感。妻の声は男、息子も同じ大人の男の声なのだわ。

どうやら、マイケルは最近何かに違和感を覚え、気がふさいでいる。
・・・何かに違和感って。。気づいてないのか?
周りの人の声、みんな一緒。みんなトム・ヌーナンの声じゃないか(笑)

そう、この映画、面白いのは主人公のマイケルともう一人を除いて、登場人物は皆同じ顔で同じ声をしてるんですよ。
勿論、周囲の人間がみな同じように見えるというのは、誰にも興味を持てない、誰にも心を開けないマイケルの心の問題を表現しているんでしょう。そんなとき、ホテルで出会ったリサだけは普通に女性の声(ジェニファー・ジェイソン・リー)、女性の顔をしてるんです。
当然ながらリサに心惹かれるマイケルはリサを自分の部屋に誘い、交流する。
この映画、ストップモーションアニメなのにしっかりベッドシーンがあるんだわ。
いったいどれだけの時間をこのシーンに費やしたんでしょうか。

ってか、こんなちっちゃいのか!
1220ANOMALISA1-jumbo.jpg


でも特別の存在だったリサも、セックスの後、マイケルがある癖を指摘し、リサがそれを直そうとした途端
リサの声にヌーナンの声が重なってくる。
マイケルの落胆は言うまでもないわけですね。

チャーリー・カウフマンという人は、孤独とか疎外感や憂鬱とかの人の心理的な問題を変わった視点でとらえ、独自の映像に置き換えることが得意な映画作家なのでしょうね。
マイケルは啓発本を出すほど「人の観察」に長けた人のはずなのに、今彼は人の区別もつかない自分に疲れ果てている。
リサと出会い、まだマイケルにも人と通じ合える可能性があると言っているのか、はたまた彼は孤独から抜け出せないと言っているのか私にはわかりませんでした。

maxresdefault.jpg


彼が子供のおもちゃを買おうとして間違えて入った大人のおもちゃ屋さんで手にした日本人形(どうやらこれも大人のおもちゃw)が歌う「桃太郎」の変な日本語が耳について離れない。
その人形がマイケルにとって唯一の他人とは違う声、顔だとしたら・・
そっちに走るのかマイケル?! だとしたら悲しい映画です。


ブログパーツ