しまんちゅシネマ

映画ノート

女はみんな生きている


2001年(フランス)監督・脚本:コリーヌ・セロー出演:カトリーヌ・フロ/ヴァンサン・ランドン/ラシダ・ブラクニ/リーヌ・ルノー/オレリアン・ウィイクハジャール・ヌーマ/ヴォイチェフ・プショニャック/ジャン=マルク・ステーレ/レア・ドリュッケール【ストーリー】エレーヌはごく平凡な主婦。大学生の息子ファブリスは恋人と同棲しているため、現在は夫ポールと2人暮らし。その夫は、妻であるエレーヌを、いまや家事をするためだけに存在する“家政婦”ぐらいにしか見ていない。ファブリスも何かと世話を焼くエレーヌを鬱陶しいとしか思っていない。ある夜、車に乗っていたポールとエレーヌのもとに血まみれの女が助けを求めてやって来る。その背後からは数人の男が迫っていた。しかし、面倒に巻き込まれたくないポールはドアをロックし、殴られる女を無視して走り去る。翌日、女のことが心配になったエレーヌは、彼女が収容された病院を探し出すと、家事を放り出して、重傷を負った彼女をつきっきりで看病するのだったが…。
■感想
「カオス」っていうジェイソン&ライアンくんの映画をレンタルしたはず、、だった。

冒頭、忙しそうに外出の準備をする一組の夫婦。
車に乗って出かけ信号待ちをしていると、男に追われる血まみれの女が助けを求めてフロントガラスを叩く。
咄嗟にドアをロックし殴られ血まみれになる女を見捨ててその場を走り去る二人‥。

あ、これSHIGEさんがレビューしてた作品だ!と直感。
で、DVDの予告だと思いながら観てたんだけど、、これが長い。
あれっ? と思い、もう一度タイトルを確認して気付いた。

あ!! こっちの「CHAOS」借りちゃった!!

なんと原題のタイトルが同じ。
カオス違いで、別物が届いたことに気付いたんだけど、間違いで観始めたこの作品がなんと面白いのです。

結局、夫に言われるままにその場を走り去ったものの、気になって仕方ない妻のエレーヌ。
意識不明のまま病院に収容された女を訪ね、家事もそっちのけで看病にあたるようになるのですが、、。
女には男たちに追われる理由があり、平凡な主婦のエレーヌもこれに巻き込まれていきます。

サスペンスタッチの犯罪モノの香りがするでしょ。

ところがこれ、なんか微妙に可笑しい雰囲気を漂わせるんですよ。

まず夫婦の関係が微妙に可笑しい。KY風の夫との間には微妙な空気が流れている様子。
意識を回復した女、ノエミの様子も微妙に可笑しい。
ノエミを守ろうと奔走するエレーヌも様子も微妙に可笑しい‥。
で、これってコメディ? みたいな(笑)

後で気付いたんですが、これ「サンジャックへの道」が好評だった女性監督の作品だったのね。

女ノエミの生れ育ちに関わる内容はかなり悲惨で
描き方によっては、暗い社会派ドラマになってしまうでしょう。

でもこの作品、その微妙な可笑しさで、ノエミとエレーナふたりの女性の奮闘ぶりを描いてくれるんです。

主婦エレーナに関しては、最初、田舎から訪ねてくる夫の母親をホテルに宿泊させる姿に、フランス人って薄情なの?とちょっと憤慨してたんだけど、ノエミの面倒を見ることに躍起になりながら実に逞しいところを見せ始めたのにはビックリ。
ノエミなんて、最後はもう痛快世直しムード!(笑)女は強い。


社会派サスペンスでありながら、ヒューマンドラマとしても考えさせられるところが多く、緩さもツボ。
フランス映画には結構手厳しいアメリカでも、Rotten Tomatoesのトマトメーター88%という高評価。

ラスト、女たちのそれぞれの表情に、ペドロ・アルモドバル監督の女性讃歌に通じる清々しさと切なさを感じる作品。
思わぬ拾い物でした!



★★★★☆