しまんちゅシネマ

映画ノート

蝿男の恐怖

 
 
ハロウィンホラー特集 今日もホラーカウントダウンから
ジョルジュ・ランジュランの小説『蝿』を映画化した『蝿男の恐怖

 
蝿男の恐怖(1958) アメリ
監督:カート・ニューマン
出演:アル・ヘディソン/パトリシア・オーウェンズ/ヴィンセント・プライスハーバート・マーシャル
   キャスリーン・フリーマン/ベティ・ルー・ガーソン/チャールズ・ハーバート
 
ご存知デヴィッド・クローネンバーグの『ザ・フライ』のオリジナルですね。
 

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冒頭、とある工場の圧搾機に上半身つぶされた男の死体が発見される。
その場から立ち去ったのが物理科学者アンドレの妻エレーヌ(パトリシア・オーウェン)。
その後、エレーヌは義理の兄フランソワ(ヴィンセント・プライス)に「夫を殺した」と電話。
アンドレとエレーヌは人も羨む仲の良い夫婦なのに、なぜ??
 
クローネンバーグ版は、徐々に蝿男に変わっていく主人公の姿をみせながら
主人公と恋人の苦悩を描くというものだったけど
オリジナルの本作は、いきなり主人公アンドレの死が描かれ
その真相を追うという、ミステリー仕立てになってるんですね。
そこから時間軸が戻され、エレーヌの証言によりすべてが明かされるつくり。
 
物質転送のアクシデントにより・・というプロットはクローネバーグ版と同じなので
展開は予想がつくというものだけど
蝿男になってしまった主人公の焦りと悲しみ、科学者としても苦しみが痛々しく、こちらも名作。
最後には、夫殺しの罪に問われる妻エレーヌの扱いに触れ
哲学的なアプローチで終わるところも斬新でした。
 
 
 
時代が時代なので、蝿男に変わったアル・へディソンの蝿のマスク姿にはちょっと笑います(笑)
仮面ライダーか!?w
大半は布を被って姿をさらないようにしたのは正解ですね。
見えないからこそ、想像力を刺激されるし、怖さも募るというもの。
勿論その姿を妻にさらしたくないという主人公の心情も痛いほど伝わりました。
 
蝿の羽音が耳に障るオープニングも、これから起きる事件を暗示していて効果的。
羽音も右のスピーカーから左に移動するため、目の前の蝿を私自身も追ってしまう錯覚に囚われましたね。
アンドレがあの蝿の口でミルクを吸い上げる音にもゾッとしたし
この時代にしては音響も凝ってたんじゃないかな。
 
夫の変化に驚愕しつつも、愛する夫を理解する妻の苦悩の描き方もよし。
まぁ、ちょっとその後の能天気すぎるところはご愛嬌だけどw
 
日本では劇場未公開だったようだけど、とっても面白い作品でした~。