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映画ノート

血を吸うカメラ

1960年(イギリス)監督:マイケル・パウエル出演:カール=ハインツ・ベーム/モイラ・シアラー/アンナ・マッセイ/マキシン・オードリー/マイケル・パウエルシャーリー・アン・フィールド/ブレンダ・ブルース/マイルズ・メイルソン/エスモンド・ナイト【ストーリー】心理学者の息子であるマークは幼い頃、恐怖が人間に与える影響について、父親から絶えず実験をされていた。度重なる実験は、マークを次第に狂気の淵に追いやっていった。やがて成長したマークは、女性の表情をカメラに収めることに執着するようになる。そしてついには、死の間際の表情を撮りたいと熱望するに至る……。

  ハロウィンホラー祭り第9弾 『血を吸うカメラ』

■感想
タイム誌のベストホラー25にも選ばれているイギリス発サイコホラーです。

 

子供の頃、「怖れ」を研究する心理学者のに実験の対象とされて育ったことがトラウマになり、
死の直前の怖れの表情を撮影する事に執着し殺人を繰り返してしまう青年の姿を描いた作品です。

 

青年マーク(カール=ハインツ・ベーム)は自分の欲求を抑える事が出来ず、女性の死の直前の恐怖に怯える表情を撮るために殺人を犯してしまいます。

 

そんなある日、階下に住むヘレン(モイラ・シアラー)と親しくなり彼女を愛すようになるマーク。
自分を撮影して欲しいと言うヘレンに対し、ヘレンを撮影する事は出来ないが、いつか自分の作品を見せる事を約束します。
ヘレンのために最高傑作を撮りたいと思うマークは、さらなる殺人を犯す事になり‥。

 

プレミア誌選出の最も危険な映画25にも選ばれている本作は、死の直前の表情を撮るという異常性から、
本国イギリスでは忌み嫌われ陽の目を見なかったのだそうです。

 

でもこれは面白かったですね。
幼少期のトラウマが屈折したサイコキラーを生むと言うのは現代にも繋がるテーマではないかと思うし、
殺人の欲求と、愛する人は守りたいという気持ちの狭間で揺れる心理描写も面白い。

 

監督さんは『赤い靴』『水仙』などで知られるマイケル・パウエルですが、劇中の、父親の実験材料にされ、怖れにおののく少年はなんとまぁ監督の実の息子であるらしいです。監督自身も、主人公マークの父親としてカメオ出演しています。

 

恋人ヘレンの盲目の母親が、階上に住むマークの足音や、フィルムを再生する物音などからマークの異常性に気付き、
追求するところから、主人公の内なる心をあぶり出す手法も見事。

 

衝撃のラストなど、いやはや、カルト的人気を誇るのも納得の作品でした。

 

原題のPEEPING TOMはイギリスのスラングで覗き見、覗き魔といった意味があるようです。



★★★★☆