しまんちゅシネマ

映画ノート

あの日、欲望の大地で

ヴェネチア映画祭では、優れた作品に贈られる最高賞の金獅子賞、監督賞にあたる銀獅子賞のほかに
俳優の演技を讃える男優賞、女優賞、審査員特別賞、優れた脚本に贈られるオゼッラ賞等の賞があります。

期待の新人に贈られるのがイタリアの名優にちなんだマルチェロ・マストロヤンニ賞で
今年はイタリアの作品『Il Grande Sogno』のジャスミン・トリンカが受賞しましたね。
昨年この賞を受賞したのは、間もなく公開の『あの日、欲望の大地で』でマリアーナを演じたジェニファー・ローレンス
ということで今日はこの作品を



2008年(アメリカ)監督:ギジェルモ・アリアガ出演:シャーリーズ・セロンキム・ベイシンガージェニファー・ローレンス/ホセ・マリア・ヤスピク   ヨアキム・デ・アルメイダ/ジョン・コーベット/ダニー・ピノ/J・D・パルド/ブレット・カレン/テッサ・イア【ストーリー】アメリカ北東部、メイン州の海辺の街ポートランド。高級レストランの女マネージャー、シルヴィアは、心に傷を抱え、自らを罰するように行きずりの情事を繰り返す。ある日、そんな彼女は怪しげなメキシコ人男性が連れてきた12歳の少女マリアの姿に激しく動揺する…。アメリカ南部ニューメキシコ州の国境沿いの町。アメリカ人主婦ジーナとメキシコ人ニックの不倫カップルは、密会場所であるトレーラーハウスの突然の炎上で2人揃って帰らぬ人に。残されたジーナの夫はニックの家族に激しい憎悪を抱く。ところが、この事件で深く傷ついた娘のマリアーナは、いつしか不倫相手の息子サンティアゴと許されぬ恋に落ちてしまい…。

ヴェネチア映画祭特集 4本目 第65回 新人賞受賞ジェニファー・ローレンス

■感想
21グラム』『バベル』の脚本家として知られるメキシコの鬼才、ギジェルモ・アリアガの初監督作品です。

メイン州の海辺の街でレストランのマネージャーとして働くシルヴィア(シャーリーズ・セロン)。
一人海辺で自傷行為を繰り返し、情事を重ねても癒されることのない心の傷を抱えている様子。



同時に映し出されるのは、メキシコとの国境の街で繰り広げられるアメリカ人主婦ジーナ(キム・ベイシンガー)と
メキシコ人男性ニック(ヨアキム・デ・アルメイダ)との情事。

二つの物語りがそれぞれ時間軸をバラしながら、交互に描くというアリアガお得意のスタイルで
不倫カップルの顛末を最初に見せ、徐々に事件の真相に迫っていく様、
不倫の事実を知った後の家族の葛藤などが描かれ、同時進行でシャーリーズ・セロンの過去に迫るんですね。

なんたってアリアガだから、違う場所で起こるエピソードは別物と割り切って観てたんですがw
終盤になってその繋がりにビックリしちゃいました。
で、後でヤフームービーの解説に目を通すと、、あれれこんなことがというのが書いてあったので
これは何も情報を入れずに観ることをお薦めしますわ。

ま、私がニブいだけかもしいれないけど、これまでのアリアガスタイルに一ひねり加えた新交錯スタイルが斬新です。

シャーリーズ・セロンは冒頭から全裸姿を披露してくれますが、
うーん、お身体も老けちゃったなぁとちょっと寂しく観ちゃいました。
が、終盤で若い頃に時間が遡るシーンがあり、そのセロン嬢は目を見張る美しさ。どっちが特殊メイク?^^;

家族への負い目を感じながらも、情事に身を任せる不倫妻を演じたキム・ベイシンガー
あくまで田舎町のおばさん風で、いつもの若さも身を潜め、リアルと言えばリアルですが、
母として女としての葛藤を熱演でした。

昨年のヴェネチア新人賞受賞のジェニファー・ローレンスは、母の不倫を敏感に察知する娘マリアーナを演じます。
彼女の抱える苦悩の大きさにも溜め息が出る思いですが、彼女は許されないと知りつつ、母の不倫相手の息子に
惹かれていくんですよね。運命のいたずらか、神に与えられた試練なのか。
事件後に深い傷を負いながらも、全ての感情を封じ込めたように振る舞う演技が後々で印象に残ります。



ある出来事に関わる人びとの苦悩は痛々しく辛いものもあるのだけど
何故こんなに心優しい気分になるのでしょう。
それは映画の中に、多くの赦しが描かれていたからだと思います。
最後に一筋の光を見せ、最後には穏やかな余韻が。。

監督の優しさも感じる作品でした。

日本公開は9/26~。



★★★★☆