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映画ノート

ウェンディ&ルーシー<未>


2008年(米)監督:ケリー・リチャード出演:ミシェル・ウィリアムズ/ウォルター・ダルトンウィル・パットン

黒く塗りつぶせ!アカデミー&インディペンデント・スピリット賞!『ウェンディ&ルーシー』

■感想
今日は久々に塗りつぶし。この作品は昨年のカンヌのある視点部門に出品されたときにちょっと話題になりました。
インディペンデント・スピリット賞では作品賞にノミネート、主演のミシェル・ウィリアムズ主演女優賞にノミネートされています。

わが街「ダラスフォートワース映画祭」で最優秀賞、「トロント映画祭」批評家賞部門で最優秀を獲得など
低予算のインディペンデント映画でありながら、昨年の映画賞では比較的話題になったんですね。

主人公のウェンディ(ミシェル・ウィリアムズ)は愛犬のルーシーとともに車でアラスカを目指すホームレスの女性。

オレゴンに差し掛かった時、ウェンディの車はエンコし、ルーシーのドッグフードも底をついてしまいます。
持ち金は500ドルほど。
ウェンディはコンビニでドッグフードを万引きしようとして捕まってしまうんですね。
コンビニの前に繋いでいたルーシーはその間に姿を消してしまい‥

これは切ない映画でした。
ウェンディが何故この歳でホームレスなのか、なぜ足首に怪我をしてるのか、何の説明もありません。
おそらくは姉妹の間に何かトラブルがあり、全てを捨てなければならなかったのか。
辛い過去があったことだけは想像出来ます。

ウェンディにとって唯一の心のよりどころのルーシーがいなくなった‥。
この映画はほぼ最初から最後まで、ルーシーをひたすら探すウェンディの姿が映し出されるだけ。
フィルムから溢れる心細さは半端じゃないんですね。


住所も電話もなければ、仕事を得ることも難しい。だからウェンディはアラスカを目指すというけれど
イントゥ・ザ・ワイルド』もそうだったように、アラスカには寂しい人たちを惹き付ける何かがあるのでしょうか。

唯一心が温まったのは、警備係の老人とのエピソード。
老人は出しゃばりすぎることなくウェンディのルーシー探しを助けます。

しかしながらホームレスとして生きる人間に犬を飼うことなど難しいのだと思い知らされる瞬間は、ただただ切ない
簡単なメロディのウェンディのハミングが唯一のBGM。これがまた切なさ倍増です。

ミシェル・ウィリアムズはウェンディの孤独を見事に表現していました。
久々にレビューしながらポロポロと涙がこぼれてしまう作品でした。
日本公開は無理としてもDVD化くらいはして欲しいな。



★★★★☆