しまんちゅシネマ

映画ノート

帰郷


1978年(米)
監督:ハル・アシュビー
出演:ジェーン・フォンダ/ジョン・ヴォイト/ブルース・ダーン/ロバート・キャラダイン/ペネロープ・ミルフォード
 
■感想
カンヌ特集 4本目
今日はジョン・ボイトカンヌ男優賞に輝いた『帰郷』を
 
海兵隊大尉である夫のボブ(ブルース・ダーン)をベトナム戦争の最前線に送り出し
孤独な時間を埋めるため、サリー(ジェーン・フォンダ)は病院でボランティアとして働きはじめる。
サリーはそこで戦争で負傷し下半身不随となった同級生ルーク(ジョン・ヴォイト)と再会。
やがて互いに惹かれ合い、愛するようになる二人。
そんなある日、戦地から夫が帰還を果すのだが・・・

二人が出会う病院の様子から『7月4日に生まれて』を思い出しました。
多数の負傷兵を収容する病院では、患者に十分な医療行為を提供できなかったのでしょうね。
サーフボードを操るように、ストレッチャーにうつぶせになったまま、
杖を用いて病院内を移動する患者がいっぱいの光景はちょっと衝撃的です。
 
国のために戦い、傷ついて帰ってきたのに、どうしてこんな扱いを受けなければならないのか
下半身不随の不自由な体で、やりきれない思いに怒りをぶちまけるルーク
そんな時、サリーと知り合い、穏やかな心を取り戻すとともに
彼は自分を、そして戦争についても冷静に見つめることができるようになります。
 
この映画の製作年をみると、ようやく戦争が終結した頃、もしくはそれ以前に
撮影してるということになるんですよね。
戦争に意味を見出せないまま、多くの人を殺してしまうことの罪悪感、
兵士の多くは身体的のみならず精神的なダメージを抱えてしまうという実態を
この時期に描いているのも印象的です。
 
それまでは貞淑な妻として夫に使え、愛国心をもって戦争も受け入れてきた妻が
夫が戦争に派遣されたことを契機に、自分で行動し、そして考えるようになる
髪型が変わるように、戦争に対する考えも変わっていくんですね。

もはや愛することを止められない二人ではあるものの
彼らはボブが帰ってきたら、この恋は終わらせなければならないと分かっている
どんな結末を迎えるのかが気になるところでした。
 
ジェーン・フォンダジョン・ヴォイトアカデミーでも主演男優賞、女優賞をダブル受賞の快挙。
怒りの演技から、サリーへの穏やかな愛を演じるジョン・ボイトはやっぱり良かった。
サリーの夫を演じたブルース・ダーンの演技も映画に緊張感を与え秀逸でした。

ラストの夫の行動はニューシネマ的ではあったけど、もう少しドラマティックでも良かったような。
とは言え、全体に流れるトーンは優しく、反戦映画として深く染み入る作品でした。
 





 

ハル・アシュビー作品優しいですね。
 
これとは関係ないけど、
東京地方では7/17~彼の幻の名作『ハロルドとモード/少年は虹を渡る』がリバイバル上映されるというではありませんか。
行ける方ぜひご覧ください。貴重ですよ。