しまんちゅシネマ

映画ノート

ひとりぼっちの青春




アカデミー賞授賞式も近づいてきました。
今年は主演男優賞が激戦の模様ですね。
個人的には『ネブラスカ』のブルース・ダーンを応援したいので
今日は出演作品からシドニー・ポラックの『ひとりぼっちの青春』を観てみました。
ひとりぼっちの青春(1969)アメリ
原題:They Shoot Horses,Don't They ?
監督:シドニー・ポラック
出演:マイケル・サラザンジェーン・フォンダスザンナ・ヨークギグ・ヤング/ レッド・バトンズ
ボニー・ベデリアブルース・ダーン/ マリリン・ハセット
1932年。カリフォルニアの海辺の通りでダンス・マラソンなる競技が開催された。
2時間ごとに10分の休憩を挟みながら、最後の一組になるまで延々と踊り続けるという過酷なものだが、不況の時代を反映して会場は賞金目当てのカップルでごったがえした。
偶然その場に立ち寄ったロバート(マイケル・サラザン)は、ひょんなことからグロリア(ジェーン・フォンダ)という女優志願の女性のパートナーとして競技に参加するはめになるのだが・・・


ブルース・ダーンはこの過酷な競技に身重の妻と出場する夫を演じていまして、
少なくとも参加中は食事にありつけるという苦しい時代を象徴する役割でしたね。
ただ、あまり出演シーンもなくしっかり脇役。応援にならないな、すみません。

それにしてもこれ、かなり面白かった。
というのも憚るほどにつらい映画ではあるんですけどね。




とにかくこの競技が凄すぎる。
ダンスといって揺れていればOKなんですが、殆ど寝ずに延々と続くわけで、会場は次第に悲惨な様相を呈し始めるんですわ。
恐ろしいのは競技を見学する客もいて、主催者はショーを演出するため煽りまくること。
『ハンガーゲーム』に通じるものがありますね。




貧しさから抜け出すことが困難な時代
人生の転機にしようと競技にかけるグロリアほか出場者の思いと会場の熱気が
異様な空気を醸し出し、まさに狂気の世界。

時折差し込まれるロバートの少年時代の牧歌的な記憶がラストシーンに繋がるとき
狂気は絶望へと姿を変えるんですよね。




原題は『They Shoot Horses,Don't They ?』
直訳すれば「彼らは馬を撃つ。そうだよね?」

誇りと煌きの象徴である絹のストッキングを失ったグロリアは
くぼみに嵌り動けなくなった廃馬と同じだったのでしょう。

製作年からするとアメリカンニューシネマのくくりでしょうか。
ベトナム戦争の時代の狂気と絶望感を重ねた傑作ですね。

マリリン・モンロー風のスザンナ・ヨークも印象的でした。