しまんちゅシネマ

映画ノート

倫敦から来た男

 

2007年(ハンガリー・フランス・ドイツ)
監督:タル・べーラ
出演:ミロスラヴ・クロボット/ティルダ・スウィントン/ボーク・エリカ/デルジ・ヤーノシュ/レーナールト・イシュトヴァーン
【ストーリー】
静かな港町で単調な生活を送ってきた鉄道員の男が偶然にも殺人事件を目撃し、大金を手にしてしまったことから運命を狂わせていく
  
■感想
『ヴェルクマイスター・ハーモニー』の鬼才タル・ベーラ監督がジョルジュ・シムノンの原作をもとに描くフィルムノワールです。

舞台となるのは、ある町の港に隣接した鉄道駅
客船を降りた人々が、その足で線路を横切り列車に乗り込む
こんなところが本当にあるんだろうかと、この時点で寓話の世界に足を踏み入れた気になる。
同時にビルの狭間に見える狭い空に、これから始まるドラマの閉塞感を予測し気を引き締めた。
 
この港を見下ろす監視塔で夜警の仕事をする初老の男が主人公。
彼は、ある晩、埠頭で争う男の声を聞き、偶然にも殺人を目撃してしまう。
死んだ男(彼が倫敦から来た男)とともに港に沈んだトランクを引き上げ、
中にあった大金を手に入れてしまった・・
 
全編モノクロ。『第三の男』を思わせる光と影の織り成す映像が美しい。


チェスの版を持ち上げ、机と版の間に折った紙を敷きこむ二人の阿吽のしぐさから
近接するカフェのオーナーとは旧知の友であるらしいことが窺える。
しかしそんな友にも家族にも言えない秘密を抱えてしまった主人公
決して豊かではない暮らしに疲れた妻(ティルダ・スウィントン)、お世辞にも綺麗とは言えない娘を不憫に思う心
彼が金に手を出した理由もなんとなく分かる気がする
 
そんな彼の周りで金をめぐる不穏な動きが起こり始めるからドキドキだ
港を打つ波の音、埠頭を歩く靴音がサスペンスを高める
 
人物の表情に迫る異常なほどの長まわしも印象的
うまい役者でなければ、とても耐えられないだろうと思う
ティルダの演技はそれに応えたし、心情を読み取る作業は楽しかった。
 
港町の閉塞感、結局はこの世界から一歩も外に抜け出すことが出来ない男の物語
倫敦から来た男も主人公と同じ穴の狢だったのかもしれない。
アコーディオンで演奏される曲が虚しく耳に響いた一作。
 
7/24に日本でもDVDが発売になったようです。
好みは分かれるかもだけど、面白く観ました
 
 




 
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