しまんちゅシネマ

映画ノート

ジャック、舟に乗る

 
2010年(アメリカ)
監督:フィリップ・シーモア・ホフマン
出演:フィリップ・シーモア・ホフマンジョン・オーティスエイミー・ライアン/ダフネ・ルービン=ヴェガ

■感想
『ハピネス』の続編にホフさんがいなかったのは残念だったなぁ。
ってことで、ロマンス大会1本目
フィリップ・シーモア・ホフマンの初監督作品の大人のラブコメいっときます。
あ、ラブコメってほど笑える作品ではありませんけどね。

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ホフさんが演じるのはニューヨークでリムジン運転手をする変態さん・・・
おっと、失礼。ちょっぴり恋愛に臆病な独身男性ジャックです。
ジャックは仕事仲間のクライドに紹介されて、コニー(エイミー・ライアン)と会い
暖かくなったらボートに乗りにいこうと、それとなく約束。初日にしてはいい感触。
 
その後、ある事件をきっかけに二人の距離は近づき
泳げないジャックはクライドに泳ぎを習ったり、コニーに食事を作ってあげるため料理を習ってみたり。
 
リムジンの運転手って、言ってみればお金持ち相手のお抱え運転手みたいなもので
不景気なご時勢、決して安定した職業ではなく、ジャックも自分の将来に不安を抱えている。
イタリア語訛りのセレブな外国人客が高級店で買い物をするのを店の外で待ちながら
ジャックの目はうつろだ。
多くは語らないけれど、そういう描写、演出にジャックの閉塞感を描き出すところに
ホフマンのうまさを感じるね。
 
何をやってもうまくいかない人生ゆえに、自分に自信をもてないでいたジャックだったけど、コニーとの出会いがジャックを変えていくのね。
泳ぎや料理を習うことも、ジャックの新たな挑戦。
 
そんなジャックをサポートする親友クライド(ジョン・オーティス)との男同士の友情の描きかたもも素敵です。
でもクライドも妻との間に確執があり、二人の関係は微妙だ。

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タイトルは『ジャック、舟に乗る』
それはジャックが閉塞した世界から自分を解き放つ意味もあるのだと思う。
ジャックとはまるで逆の方向に向かってしまうクライドにとっても
ある意味、突破口を開くことにつながったといえるのではないかな。
切なさは残るけど、別れは、必ずしも不幸ではないかもしれない。
 
ちょっと無駄かなと思うところもあるけど
ラストシーンには爽快感と軽いカタルシスを感じるところで、
人間模様を丁寧に描いているところなど、ホフさんらしいと感じるデビュー作でした。
リムジンから見るニューヨークの冬の風景も良かったです。