しまんちゅシネマ

映画ノート

クライング・ゲーム

今月はセント・パトリック・デイにちなみ、アイルランド関連の作品を何本か観てきました。
最終日、トリを飾るのはやっぱりこれ。
アイルランドを代表する映画監督ニール・ジョーダンの傑作ラブサスペンス『クライング・ゲーム

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クライング・ゲーム
1992年(イギリス)
原題:The Crying Game
監督:ニール・ジョーダン
出演:スティーブン・レイジェイ・デビッドソンミランダ・リチャードソンフォレスト・ウィテカーエイドリアン・ダンバー

【ストーリー】
IRAのテロリスト、ファーガスは人質に取った黒人兵士と奇妙な友情で結ばれる。そして彼の死に立ち会い、彼の恋人に会う約束を交わす。ファーガスは身分を隠してその女性に近づくが、ミステリアスな魅力を秘めた彼女にやがて心を奪われていく……。(映画.comより)

IRAメンバーが黒人兵士ジョディ(フォレスト・ウィテカー)を拉致監禁したのは
ジョディの命と引き換えに仲間の釈放を要求するためで、猶予期限は3日。
麻袋を被せられ、メンバーで交互に監視される中、
唯一ジョディを人道的に扱おうとするIRAメンバーファーガス(ティーブン・レイ)との間に
奇妙な友情が生まれていきます。
しかし期限が迫り、死を覚悟したジョディはファーガスに頼むんですね。
「自分が死んだら、ロンドンにいる恋人に、愛していたと伝えて欲しい」と。

ここまでの過程が丁寧で、アイルランドの国民性や暮らしぶりまで垣間見れるのがいい。
あんな汚いアジトでも、お茶は欠かさないのもアイルランド的。
アカデミー賞脚本賞を受賞しただけあって、ジョディとファーガスの間に交わされる会話にも
生い立ちや差別やら、文化に至るまで盛り込まれていて秀逸。
友情や互いをリスペクトする気持ちがしっかり描かれているから
後半、ロンドンにジョディの恋人を探しにいくファーガスの行動にも必然性が生まれる。
IRAのメンバーにはなったけれど、もともとボランティア的な気持ちだったファーガスは
他のメンバーのようになれないことにも気づいている。
ジョディに「いい奴」だと自分のサガを指摘され、そのサガに正直に生きる
勇気を貰ったとも言えるでしょう。
あるいは、写真で見たジョディの美しい恋人ディル(ジェイ・デヴィッドソン)に、
最初から恋していたのかもしれない。

かくしてロンドンに赴くファーガスですが、そこからは思わぬ展開が待っていて
予想を超えたラブサスペンスになっていくんですね~(笑)←なぜ笑うw

私がこの映画に惹かれるのは
登場人物の孤独に共鳴するからかな。

IRAのエリート風なリーダーピーターも、美しい女闘士を演じたミランダ・リチャードソン(彼女が強烈)も
どうしてそんな風に生きなきゃいけないんだろうと哀しくなる。
IRAのお話に刹那感はつきものですね。

けれどこの映画は、ラストちょっと意外なところに落ち着くんだよね~。
さんざん、ミステリアスかつノワールに展開していながら
しかも薄幸顔のスティーヴン・レイなのに、最後こう来るか?ってなもんで
正直、一瞬腑抜けになったのだけど(笑)
最終的には幸せな気分になったからOKw