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映画ノート

『ミヒャエル』ある小児性愛者の最後の5ヶ月

今日は珍しくオーストリアの映画を観ました。
ミヒャエル・ハネケキャスティング・ディレクターを勤めたマルクス・シュラインツァーの
初監督作品。
小児性愛の男ミヒャエルと、彼の自宅地下室に監禁された少年の5ヶ月間を描く異色ドラマです。



ミヒャエル
2011年(オーストリア
原題:Michael
監督:マルクス・シュラインツァー
出演:ミヒャエル・フイト, ダヴィド・ラウヘンベルガー
Christine Kain

ミヒャエルは保険会社に勤める30代の男。
仕事もまじめにこなし、隣人とも普通に挨拶を交わす。
けれども、彼が普通の若者と違うのは、自宅の地下室に10歳の少年を監禁していること!

地下室に子供を監禁する映画と聞くと
子供を虐待し残酷に殺してしまうものを思い浮かべるのだけど
この映画は、その類とはまるで違っていて驚かされます。

ミヒャエルは子供と夕食をともにし、食後は一緒に片づけをする。
子供にはベッドや机を与え、
時には外に連れ出して、動物と触れ合わせたりもする。
ミヒャエルは子供を監禁してはいるけれど、ある意味
父親のように、しつけ、愛情を与えてもいるんですね。



あるとき病気になった少年を主人公は仕事を休んでまで介抱する。
けれども一方で、熱が下がらないと知るや、林に墓穴を掘りにいき
映画は、ミヒャエルが車を念入りに掃除する姿を映し出す。
私たちは少年の身を案じ、恐々と次のシーンを観るわけで、
この予測のつかないストーリーと、独特の緊張感が映画の要。
どこかハネケの作風に近いものがあるかもしれません。

監督のマルクス・シュレインツァーはインタビューの中で
オーストリアの誘拐事件の多さを嘆いています。
いつの時代も誘拐失踪事件は後を絶たない。
身代金目当てでない事件の背景には何があるのか?
この映画は、あまり語られない小児性愛を描く作品なんですね。

主人公がいくら人間性を見せたとしても、
少年を拘束し彼の人生を奪っていることに変わりは無い。
けれど何か解決策があれば、小児性愛者たちは、犯罪に手を染めずにすむのではないか。
監督にはそんな思いもあるようです。

あからさまな描写はないものの、主人公の性癖は明らで
観るものを選ぶ作品かもしれないけれど
初監督作品で、タブーとされる領域に挑む心意気は買いたいし
実際、面白く観ました。
ミヒャエルと子役の演技も素晴らしい。さすがキャスティングディレクター。
ちなみに写真で見た監督さんは、主演の俳優によく似てます (=゚ω゚)人(゚ω゚=)ぃょぅ!



★★★★