しまんちゅシネマ

映画ノート

象を連れての優しき逃亡劇『脱走山脈』

上野のパンダの赤ちゃんは残念でしたね。
あんなに小さく生まれてくるんだもの、ちゃんと育つのは難しいことなんでしょうね。
飼育係の皆さんの落胆も大きいことでしょう。
たとえ数日係わっただけでも、動物との間には大きな絆が芽生えることがある。
今日はそんなことを思いながら、この映画を記事にします。

第二次世界大戦のドイツを舞台に、捕虜として捉えられた兵士が
世話をすることになった象を連れて、脱走を図る
マイケル・ウィナー監督、オリバー・リード主演の
ちょっと変わった脱走もの活劇ロードムービーです。





脱走山脈
1968年(イギリス)
原題:Hannibal Brooks
監督:マイケル・ウィナー
出演:オリヴァー・リードマイケル・J・ポラードヴォルフガンク・プライスヘルムート・ローネル
ペーター・カルステン

スピルバーグの『戦火の馬』が記憶に新しいですが、本作は戦火の象。
オリヴァー・リード演じるイギリス兵ブルックスは捕虜として囚われながら、動物園で象のルーシーの飼育の助手の仕事を与えられるんですね。
ルーシーの世話をしながら絆を深めていく頃、戦況が悪化し、動物園が連合軍に爆撃される。
動物園長はルーシーをオーストリア疎開させることを決め、ブルックスに同行を命じます。
しかしSSに乗車を阻止され列車の旅は徒歩の旅へと変更されることになり、ブルックスはルーシーを連れ山脈をテクテクテク。
ところが途中警備のドイツ兵に攻撃され、誤って殺してしまったことから、彼は追われる身になってしまいます。





一人で逃げればことは簡単だけど、彼はルーシーを見捨てられない。
かくして象を連れての風変わりな逃亡の旅が始まるわけです。

美しい音楽と田園的な風景をバックに山脈を歩く兵士と象の絵は、とても戦争映画とは思えない穏やかさなんですが、途中、脱走兵の仲間と合流し、敵と対峙するという場面では、思いがけずスケールの大きなアクションシーンが展開される。その緩急のつけ方が面白いのですよ。

このルーシーがまた可愛くてね。
象の怪力を利用して敵と戦うアイディアもユーモラスかつ痛快。

オリヴァー・リードはこの頃ちょっとハビさん&クルーニーを足して2で割った風貌ですが、人なつっこい笑顔の下に、意思の強さを感じさせ魅力的ですね。

戦争に翻弄される人々の姿を垣間見せながらも、ゆったりしたロードムービー風の旅を楽しむ感覚もあり、ラストシーンは爽快感も得られます。たまにはこういう戦争映画もいいものです。

★★★★