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映画ノート

ランページ/裁かれた狂気







ランページ/裁かれた狂気(1988)アメリ
原題:Rampage
監督:ウィリアム・フリードキン
出演:マイケル・ビーンアレックス・マッカーサー、 ニコラス・キャンベル、 デボラ・ヴァン・フォルケンバーグ、 ジョン・ハーキンス、 ロイス・D・アップルゲイト

引き続きフリードキン監督作品を。

猟奇殺人事件が起こり、若き検事トニー(マイケル・ビーン)が事件を担当することになる。二度目の事件の後、リチャード・リース(アレックス・マッカーサー)が捕まった。

実際にあった猟奇殺人事件を基にしたサスペンス映画です。

スポーツ店で拳銃を買い、日中の人家に押し入り、説明もなく発砲
愛想のいい笑顔をたたえた青年の一連の行動に度肝を抜かれます。
女性の死体は切り裂かれ、臓器の一部は持ち去られている。
捕まった犯人リースによると、身体を維持するために血を飲まなければならなかったと。。




異常な供述を繰り返す犯人
彼が精神疾患で加療した既往を持つことから、
裁判の争点は犯人の責任能力の有無に絞られることになります。

日本でも似たケースはたくさんあって、精神疾患により責任能力なしとされることは
ある意味罪から逃れる手段にも思えてしまうこともありますよね。

この映画ではシンプルに
「精神に異常をきたした上での犯行は罰を受けるべきかどうか」に迫ります。
事実をほぼなぞりつつも、監督の言わんとすることはマイケル・ビーン演じるトニーに託した形でしょうね。
ナチスユダヤ人迫害を引き合いに出すところは凄く面白い。
ナチスドイツのしたことは、とても正常な精神では考えられない
とするなら、彼らは幻想に惑わされて犯罪を犯したのか。
では、ユダヤ人を殺害した責任は誰が負うのか ということ。

治療により通常の生活が可能になる患者を救いたいとする精神科医の義務感もわかる。
しかし、どうも憎々しく見えるのは、監督の気持ちが反映されてるからかな。
判決の行方はとても興味深いところでした。

ただね、私の観たバージョンが撮影されたあとに、モデルとなった獄中の犯人が自殺したことから、エンディングに新しいエピソードを加えた別バージョンが作られたようなんですね。
そちらも観てみたい気がするけど、映画サイトのユーザーレビューによると、詰め込みすぎという感想も寄せられていました。
オリジナルはシンプルだったけど、殺人シーンの異常性が緊張感を持って描かれ、
裁判の争点もわかりやすかったのでこれでよかったかもと思います。





ターミネーター』で未来からやってきたカイルを演じたマイケル・ビーン
娘を亡くした経験から、犯人の死刑判決を望むようになる検事を熱く演じています。
笑顔の下の虚ろさを表現した犯人役、アレックス・マッカーサーの異様さも印象に残ります