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映画ノート

スリーピング タイト 白肌の美女の異常な夜



スリーピング タイト 白肌の美女の異常な夜(2011)スペイン
原題:Sleep Tight
監督:ジャウマ・バロゲロ
出演:ルイス・トサル/マルタ・エトゥラ/アルベルト・サン・フアン
映画サイトの紹介を見ると、男の妄想をテーマに描く官能サスペンス 
などと 説明されてるけど ちょっと違うなぁ。

主人公のセシル(ルイス・サルト)はマンションの住み込み管理人として働く冴えない中年男。
冒頭、ビルの屋上に立つ主人公
ラジオから流れるのは、生きることに希望を見出せない人々の電話相談。
不幸な人間は自分だけじゃない そんな思いが彼に自殺を思いとどまらせる。 

セシルの興味はマンションの美しい住人クララ(マルタ・エトゥラ)に向いていた。
ある朝、クララの眠るベッドから起きだし、自室に戻るセシル
クララのベッドサイドには、恋人と一緒に微笑む写真




そう、セシルは管理人の特権を利用し、クララの部屋に侵入。
ベッドの下でクララの帰りを待ち、寝静まった彼女に薬をかがせるという行動に出ていたのだ。

という話で、よくあるエロティック・ストーカーものの雰囲気を漂わせるのだけど、
実のところまるで違う。映画サイトの説明も腑に落ちない。
だって、セシルは妄想にとりつかれているわけではなく、彼の目的は他にあるから。

いや、これは面白かった。
男が潜んでいることがバレそうになるときの緊張感たるや半端ない。

言ってみれば、おっさん版『あるスキャンダルの覚書』
しかし、本作のほうが限りなく陰気。
罪のない人間を陥れ、静かに、最も効果的な方法で苦しみを与える主人公には同情の余地がない。

面白いのは、セシルの秘密を握った少女とセシルの関係。
子供のくせにセシルを脅し金を巻き上げる少女は、セシルにとってウザい存在のはずなのに
セシルは脅された後に一人ほくそ笑む。
おそらく二人は似たもの同士。セシルにはそれが分かるのでしょうね。




無邪気な幸せオーラは悪魔のトリガーを引く
人間の弱さの裏にある醜さを、サスペンスフルに描ききった秀作だと思います。
ちなみに主演のお二人は実生活でもパートナーだそうです。