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映画ノート

【映画】EVA〈エヴァ〉

一度リセットしたものは完全には戻せない

キケ・マイーヨ監督によるスペイン発SFです。

 

 

EVA〈エヴァ〉(2011)
EVA

【あらすじと感想】
近未来。ロボット工学の第一人者アレックスは10年ぶりに故郷を訪れる。
古巣の大学で新しい子供型ロボットを作る最終段階の仕事を任されたからだ。
それは、アレックスが10年前に放り出した作業でもあった。

モデルとなる子供を探しに街に出たアレックスは、そこで美しい少女に目を止める。
それは兄とアレックスのかつての恋人ラナの娘エヴァだった。
新型ロボットの感情を研究するため、エヴァに協力を求めるアレックスだったが・・

本作がどんな風に展開するかは、冒頭の10分でわかりますね。
ロボットのプログラミングを学ぶクラスを訪ねたアレックスは
馬のロボットを制御できず焦る学生の目の前でロボットをリセットし
一度リセットしたら元には戻らないと言い放ちます。
再起動して消された記憶は戻らず、もはや同じロボットにはならないのだと。

案の定、アレックスの研究も「ロボットの感情のコントロール」の問題にぶち当たります。
が、しかし映画の本質はそこではないのです。
今回はその本質を語るにあたり、ネタバレしますので、未見の方はご注意ください。

 

 

 

アレックスは10年前、研究とともにラナを捨てた過去があります。
しかし逢えばまたラナへの愛が蘇る。ラナも同じ・・
やがてある事件が起きてしまう。
ラナには新しい家族があり、全てを元に戻すなど不可能なのですよ。

アレックスがロボットの脳を組み立てる美しいシーンがあります。
脳や感情を構成していくのはまるで繊細なガラス細工です。

いくら科学が進んだ近未来でもこうはならない。でもそんなの関係ない。
何故なら、この映画は科学的考証に則ったバリバリなSFではないから。

ここでもう一つネタバレですが、ラナの娘エヴァは実はアンドロイドでした。
アレックスが途中放棄した子供型ロボットをラナが完成させ、実の子供として暮らしていたのです。

エヴァがアンドロイドに見えないことも、おそらくは10年間同じ姿であるにも関わらずエヴァが自分がロボットだと気づいてないのも
そもそもラナがそんな凄いアンドロイドを完成させていたのなら、なんで今さらアレックスが大学に呼ばれるのかということも、全てツッコミどころではありますが、それもこの際関係ない(笑)

一度リセットしたものは完全には戻せないのだと
テーマはそこにこそあるからです。

ラストシーン、アレックスとラナ、そしてエヴァが夕暮れの浜辺を楽しそうに歩いている。
勿論現実ではありません。
もしも、アレックスが過去を捨てずにラナと暮らしていたら
そこにいるエヴァはアンドロイドではなく、本当の2人の子供であったはず。
こんなに幸せな未来があったのに・・ という哀愁に満ちた最後でしたね。

センチメンタルなテーマはそれなりですが
世界観と映像の美しさは一見の価値ありと思う映画でした。


映画データ
製作年:2011年
製作国:スペイン
監督:キケ・マイーヨ
脚本:セルジ・ベルベル
   クリスティナ・クレメンテ
   マルティ・ロカ
   アインツァ・セラ
出演:ダニエル・ブリュール
   マルタ・エトゥラ
   アルベルト・アンマン
   クラウディア・ベガ
   アン・キャノヴァス
   ルイス・オマール