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映画ノート

【映画】『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』丸ごとトム・ハーディ!



車の中だけでストーリーが展開するというトム・ハーディ主演の話題作です。
オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分(2013)イギリス
原題:Locke 監督:スティーヴン・ナイト
出演:トム・ハーディ
日本公開:未定
建設会社のサイト・マネージャー、アイヴァン・ロック(トム・ハーディ)は、大事業のコンクリート搬入を翌朝に控えたある日、夜のハイウェイに車を走らせる。不倫相手の出産に駆けつけるためだ。車中のアイヴァンは仕事仲間に電話し、自分に代わって搬入をマネージするよう依頼するが・・

いや、これは面白かった。会社の将来のかかった大事業と不倫相手の出産。
アイヴァンはロンドンの病院に向かう道すがら、さまざまな問題に対峙します。

自分の決断を信じ、誠実かつ冷静にことをやり遂げようとするアイヴァンですが、そう簡単にはいかない。
問題にぶち当たりイラついたり、絶望の底に突き落とされたり
映画と同時進行で展開する物語をハラハラと固唾を呑んで見守ることになりました。

監督兼脚本を手がけるのは『イースタン・プロミス』の脚本家として知られるスティーヴン・ナイト
ドライブ中の車内という限られた空間だけで、アイヴァンの人柄や仕事ぶり家族の様子や人生観まで想像させつつ、諸問題をクリアしてみせる脚本が見事ですね。

画面に登場するのはハーディ一人のみ。
そもそも信頼される仕事人であり、よき家庭人であるアイヴァンが
大仕事を人に任せるというリスクを負ってまで不倫相手の出産に駆けつけるのは
彼の生い立ちに起因するある確執が関係してくるんですね。
が、詳しいことは言わないでおきますが・・



そんな主人公の複雑な心境を運転しながら繊細に演じたハーディはやっぱり凄い。
普段は寡黙な役が多いハーディがずっと喋りっぱなしで、喜怒哀楽を表現してくれるんだから
ファンにはもうたまりません。

電話してないときでさえ自分自身に向かって喋ってますからね(笑)
シェークスピアの舞台劇の世界です。

しかしながら映画はハーディの個人プレーにせず、
アイヴァンをサポートする周囲の者の成長まで描いているところが素晴らしく、
周囲の成長にアイヴァンが高揚するところが爽やかで感動的でした。

緊張の中、時々ユーモアも交える見せ方もうまい。
映画の終わる頃、アイヴァンにどんな変化が見えるかは観てのお楽しみ 
ということで。 秀作です。