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映画ノート

【映画】『フランキー&アリス』:私の中の3人の私

フランキー&アリス(2010)カナダ
原題:Frankie & Alice
監督:ジェフリー・サックス
出演:ハル・ベリーステラン・スカルスガルド/フィリシア・ラシャド/チャンドラ・ウィルソン
日本公開:2014/9/20
1970年代初期のアメリカ。
ゴーゴーダンサーのフランキー(ハル・ベリー)は時折自分のしたことを忘れている時間があることに気づいていた。
ある日異常行動から警察に連行されたフランキーは、精神科医オズワルド(ステラン・スカルスガルド)により
複数の別人格を有する解離性同一性障害であると診断される。

 

もう一人の自分シリーズが続きます。
前回の『嗤う分身』が「分身」の正体を明確にしないまま、
自己と相反するもう一人の自分とのせめぎ合いをファンタジックに描いていたのに対し、
本作では「解離性同一性障害」という疾患に対峙する主人公を真っ向から描いていまして、
しかもこれ実話だそうです。

解離性同一性障害についてwikiで調べてみると
解離性障害は本人にとって堪えられない状況を、離人症のようにそれは自分のことではないと感じたり、
あるいは解離性健忘などのようにその時期の感情や記憶を切り離して、
それを思い出せなくすることで心のダメージを回避しようとすることから引き起こされる障害であるが、
解離性同一性障害は、その中でもっとも重く、切り離した感情や記憶が成長して、別の人格となって表に現れるもの 
と説明されています。

なるほど、映画はまさにそれ。
フランキーが過去の記憶を部分的になくしているのもダメージ回避なんですね。
おかげで医師は原因追求に苦労することになるけれど
その分、トラウマに迫る過程が謎含みのミステリーとなるため面白いんですよ。

別人格の一つに「差別主義的な白人女性」というのが存在するのも
フランキーの複雑な心の反映と思えば納得。
それが出てくる瞬間はゾクっとしますけどね(笑)

複数の人格を演じ分けたハル・ベリーはさすがの演技で2010年度のゴールデングローブ女優賞にノミネート
ただ少女の演技にはちょっと無理があったかな。
三つ巴で人格が現れるところは、研ナオコと谷村新二の物まねの入れ替わりみたいで
ちょっと笑ってしまったのはココだけの話ということでw



終盤は伏線が繋がっていく様子に満足し、ステランさん演じる精神科医とフランキーの信頼関係にもほっこり。黒
人差別が根底にある悲しい話ですが、終わってみればフランキーの再生に新しい時代を感じることができる作品。

解離性同一性障害についての認識も深まりました。