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映画ノート

【映画】『イーダ』ポーランドの歴史を静かにみつめる




イーダ(2013)ポーランド
原題:Ida - Formerly Sister of Mercy
監督:パヴェウ・パヴリコフスキ
出演:アガタ・クレシャ / アガタ・チュシェブホフスカ/ ダヴィッド・オグロドニック/イェジー・トレラ
アダム・シシュコフスキ/ ハリナ・スコチンスカ/ ヨアンナ・クーリグ
1962年ポーランド
正式に修道女となる儀式を前に、アンナは初めて親族の存在を知らされ、叔母ヴァンダの元を訪ねる。
そこで知らされた事実に戸惑いながらも、叔母と2人、両親を知る者に会うため旅に出る・・






 パヴェウ・パヴリコフスキ監督の前作、イーサン・ホーク主演の『イリュージョン』は一風変わったミステリー映画でしたが、アーティスティックでムーディなところが気に入ったので、本作も楽しみに観ました。
今回は監督が初めて祖国に戻って撮り上げた一本とのことで、ポーランドの歴史を踏まえた静謐なる仕上がり。修道院で育ったユダヤ人少女のルーツを探るロード・ムービーでもあります。

 冒頭、印象的なのは、修道院に暮らす主人公アンナが大きなスクリーンの片隅に小さく映し出されること。
顔の下部も切れるほどの映し方につい意味を考えてしまいます。
その後、初めて会ったおばから、自分の名前がイーダで、ユダヤ人だと知らされるアンナ。
叔母と共に訪れた地で、アンナいやイーダは自分のルーツを知ることになるのです。

 この時代のユダヤ人を描くものとして、切り離せないのが侵略とユダヤ人虐殺の歴史でしょう。
悲しいのはユダヤ人虐殺にポーランド人自身も加担しているという事実。
被害者であり加害者である祖国を真摯にみつめる監督の視線が印象的です。




彼女の出した答えは意外にも思ったけれど、力に力で立ち向かおうとした叔母に対し、慈悲を自愛で返すことを択ぶイーダ。監督は未来に向かうものにその道筋を与えようとしたのでしょうね。
牛小屋にステンドグラスを飾るのは、イーダが唯一母から学んだもの。
イーダを演じたアガタ・チュシェブホフスカはフードを取るととても幼くて可愛らしい。
「自分」を知り、歩く道をみつけたイーダが、最後にはしっかり画面の中央を歩くのも象徴的でした。
 
 台詞を抑え、美しいモノクロ映像で切り取る画面はポエティックな挿絵のごとく。
ジャズシーンの音楽もよかった。監督はやっぱりアーティストだと思う。



ちなみにジャズバンドの美しいボーカリストは『イリュージョン』の鄙びたホテルの謎めいたポーランド人女性を演じていたヨアンナ・クーリグ。監督のミューズかな。
と思ったら『ヘンゼル&グレーテル』の魔女も彼女w七変化女優だわ