しまんちゅシネマ

映画ノート

イリュージョン<未>




正月第一弾は2013年最後に観たポーランド発の未公開スリラー『イリュージョン』を。
イリュージョン(2011)アイルランドポーランド・イギリス
原題:The Woman in The Fifth
監督:パヴェウ・パヴリコフスキ
出演:イーサン・ホーククリスティン・スコット・トーマス/ヨアンナ・クーリグ/サミール・ゲスミ
日本公開:未公開

【ストーリー】
アメリカ人作家のトム(イーサン・ホーク)は別れた妻と娘に会うためパリにやってくる。しかし妻からは拒否され警察を呼ばれる始末。飛び乗ったバスで荷物を盗まれたトムはカフェの二階のうらぶれたホテルに宿泊を許可された。ある日、立ち寄った本屋で誘われた作家の集まりで出会った美しい未亡人マーギット(クリステン・スコット・トーマス)は、トムのひと時の癒しとなるが、同時にトムの周囲で不可思議な事件が起こり始め・・・。

イーサン・ホーク主演のミステリー・サスペンスです。
アメリカからやってきた主人公トムの周囲で起こる不思議な事件の謎を解くお話なんですが、映画は終始憂鬱な雰囲気に包まれます。そもそも、トムが妻に何故あれほど拒否されているのかの理由が説明されない。トムは宿のオーナーから怪しいアルバイトを持ちかけられ夜の6時間を過ごすのだけど、そこにやってくる訪問者の目的も分からない。そんな中、カフェのポーランド人ウェイトレスの優しさが身につまされる。彼女がポーランド語で歌う歌は、内容は分からないけれど、寂しく愛おしく胸に響くのです。その度にトムは娘を想い長い長い手紙を書く。そして遠くからとても切ない目で娘を見つめるんですね。救いのないほどに不幸な空気を漂わせるイーサン。そして、イーサンに怪しくまとわりつく未亡人のクリスティン・スコット・トーマス・・




 原作はダグラス・ケネディの『The Woman in the Fifth』、監督は『マイ・サマー・オブ・ラブ』(←未見)のパヴェウ・パヴリコフスキ
原作は読んでないんですがタイトルの意味はクリスティン・スコット・トーマス演じる謎の未亡人を指しているんですね。どうして邦題はそれを無視して『イリュージョン』なんて付けちゃうんでしょう。あかんがな。
 
 この映画ね、評価が真っ二つに分かれてるんですよ。それは間違いなく、この映画をどう解釈したかによると思います。「くだらない。丸投げ」と評する人がいる一方で、「知的な傑作」と賞賛されるのはなんだろうと、そんなことが気になりました。

 個人的には最初2通りの解釈が浮かび、2番目を確信するためにイーサンのインタビューを読んで、3番目の解釈に行き当たりました(笑)イーサンは「監督は観客がさまざまに解釈するのを楽しみたいと言っているのであえて答えをいう必要はない」と言ってるんですが、3番目の解釈を頭に置いて再見してみると、謎を解き明かす鍵となるものが実に多く仕込まれていることに気づくんです。監督がポーランド人ということもあってか、やりきれないほどに物悲しいお話ですが、なるほど緻密に知的に構成された作品でした。イーサンの演技も絶品です。ぜひご確認あれ。そのうちに裏ブログでネタばれ記事書きます。