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映画ノート

東ベルリンから来た女




昨年観ようと思いながら忘れてたり、機会を逸していた作品がいっぱいあります。
この機に、お仲間のトップ10記事で思い出したもの、気になったものを観ていこうと思います。
まずは、クリスティアン・ペツォールトベルリン映画祭で監督賞を受賞した『東ベルリンから来た女』
1980年の東ドイツを舞台に、西への脱出を画策するひとりの女医を描くサスペンス・ドラマです。
東ベルリンから来た女(2012)ドイツ
原題:Barbara
監督:クリスティアン・ペツォールト
出演:ニーナ・ホス/ ロナルト・ツェアフェルト/ ライナー・ボック/ ヤスナ・フリッツィ・バウアー/ マルク・ヴァシュケ
日本公開:2013/1・19
 
まだ東西を別つ壁があった時代のドイツを描く作品はいくつかあるけど、秘密警察の監視下にある東ドイツを舞台にしたものは、そんな昔でもないのにこんなことがまかり通っていたのかと驚くものが多いですね。
本作も、西ドイツへの移住申請を出したばかりに、田舎の病院に左遷され、秘密警察の執拗な監視を受ける女医が主人公とあって緊張感を漂わす作品になっています。

 しかし本作の面白いのは、主人公が非常に優れた医者であるという点。
バルバラニーナ・ホス)は恋人と密会し、秘密警察の監視をかわしながら脱出の準備を進めるのですが、その一方で、医師としての勤めを忠実に果していく。やがて医師としての情熱や誇り、責任感が彼女の心を揺らし、そこに同僚アンドレロナルト・ツェアフェルト)の存在が仄かなロマンスをにおわせ、東西ドイツ特有のサスペンスドラマに、一人の女性の生き方というヒューマンドラマの重みが加わるのです。
バルバラが患者を的確に診断していく様子などに、医療ドラマとしての面白みもありました。



バルバラを演じるニーナ・ホセはどっちかっちゅーと怖い顔なんですがw 周囲から孤立していくことも厭わない意思の強いバルバラが、アンドレの優しさに触れ、たまにぎこちない笑顔を見せそうになると、なんだか嬉しくて、そんなところもツボ。
意外な結末にも、そういう選択もあるよなぁと納得でした。
それにしても東から脱出するために、あんなことまでしてたんだというのはほんとびっくり。
東西ドイツの時代を語る上でも貴重な一本となる作品かと思います。