しまんちゅシネマ

映画ノート

【映画】『野性の証明』



私も追悼に健さんの映画を観てみよう・・と思ったんですが、
こちらではレンタルできるものが7本しかなく、その中から『Never Give Up』をチョイス。

借りたあとに邦題を確認したら『野生の証明』でした。
健さんを偲ぶにふさわしい作品はもっと他にたくさんあるんでしょうけど、私なりの追悼です。
野性の証明(1978)日本原題: 監督:佐藤純彌 出演:高倉健/薬師丸ひろこ/夏八木勲中野良子三國連太郎舘ひろし田村高廣ハナ肇松方弘樹丹波哲郎成田三樹夫原田大二郎/ 梅宮辰夫
森村誠一の同名小説を佐藤純彌が監督した角川映画の大ヒット作ですね。
これ、大昔にテレビでチラりとは観てるはずだけどほとんど記憶になかったので、新鮮に観ました。

高倉健さん演じる味沢は元自衛隊特殊部隊の優秀な隊員でしたが、東北の山中でのサバイバル訓練中、
寒村で起きた大量惨殺事件に遭遇し、その後自衛隊を退職。

一年後、保険外交員として働く味沢は惨殺事件の唯一の生き残り、13歳の頼子を養子とし、ともに暮らしています。
薬師丸ひろこ演じる頼子は、ショックから事件に関する記憶をなくしている。



さんはなぜ頼子を養子にしたのかに謎を残しつつ、
映画は保険外交員となった健さんが、保険を担当したある死亡事故に疑問を持つところから始まり、
地元を牛耳る組織の陰謀を探るサスペンスへと発展していきます。

地元の大物が三國連太郎で、その馬鹿息子が舘ひろし
やくざもんの土建屋梅宮辰夫等々、出てくる人がみんな大物役者ぞろい。
しかも36年も前の作品ですからみんな若い。
薬師丸ひろこちゃんなんて14歳ですよ。

彼女演じる頼子はちょっと先を予見できるニコラス・ケイジ程度の予知能力があるという設定。正
直それ要る?と思うところだけど、
「お父さん怖いよ。大勢でお父さんを殺しに来るよ」とCMで聞けばそそられるのは確か。

野性の証明』というタイトルも『人間の証明』の二番煎じなのでしょうけどこの映画のいう「野性」ってなんだろう。
特殊部隊で「人殺しマシーン」に鍛えられているとしても、それ野性ちゃうし。

自衛隊脱退後、どんな暴力にも黙って耐えた健さんが唯一強さを発揮するシーンで
夏八木さん演じる刑事に「それがお前の本性だ」みたいなこと言われるけど、斧投げて渡したの誰やねん!だったしね。

ま いいか。

健さんがその土地に住むことになる理由などかなり強引だったり、荒唐無稽と思う部分も多いですが
何より凄いのは自衛隊をこんな風に描いてしまうこと。
協力を得られず、戦車を使うクライマックスシーンはアメリカロケとのこと。そりゃそうだろな。

個人的にこの映画で一番よかったのは、健さんとひろこちゃんの擬似親子の関係です。
ここね、ある部分を明かさずには書けないので、以下半分ネタバレさせていただきます。

未見の方はご注意ください。
寒村の惨殺事件の全容は明かしませんが・・

味沢は事件の日、頼子の父親を頼子の目の前で殺してしまってるんですね。
罪の意識に苛まれながら、十字架を背負い続ける味沢と、潜在的に父親を殺した犯人を憎んでいる頼子。

頼子が真実を知ったらどうなるのか。
そこに興味をそそられました。

個人的に少し残念だったのは、トンネルを走り出てきた頼子の心理がやや分かりにくいこと。
いや、味沢に走りよる姿から、頼子が全てを許した上で感謝と愛情を示したのは分かるのだけど
そこに至る瞬間の心理描写が端折られた感じがしてね。

でもそれを補ったのがエンドロールで見せる二人の日常でしょう。
おそらくは責任感から頼子を引き取った味沢も、いつしか頼子との暮らしに安らぎを覚えてもいたんでしょう。
二人は確かに親子の情で結ばれていたんだと、ここにきてジワジワ感動。
健さんのお茶目な表情が見れたのもよかった。



健さん長い間お疲れ様でした。