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映画ノート

レポマン



レポマン1984アメリ
原題:Repo Man
監督:アレックス・コックス
作品情報

あらすじ
仕事をクビになった青年オットーは、ある日ローン未払いの客の車を取り立てる“レポマン”という職業の男と知り合い、仲間として働くことになる。そして高額の懸賞金が掛かった車を差し押さえるが、その中には宇宙人の死体が入っていた……。

トレーラー
レポマン [DVD]


感想

80年代映画特集今日はアレックス・コックス監督による、これまたカルト扱いのSF青春スリラー。
ジュード・ロウ主演の『レポゼッション・メン』は、臓器移植をしたはいいが、支払いの出来ない者の臓器を取り立てる任務を遂行するレポゼッション・マンという仕事人を描いたSFでしたが、こちらは車のローンを払えなくなった者から車を取り返すレポゼッション・マン、略してレポマンのお話。
若きエミリオ・エステヴェス演じるパンク青年オットーがひょんなことからレポマン稼業に足を踏み入れ、トランクに宇宙人の死体の入った危険な車を、そうとは知らずに高額な懸賞金目当てに追いかけることになるんですね。




パンクな青年オットーは素行の悪さを注意され自らスーパーの仕事を辞める。
パンク仲間はコンビニで強盗するし、車泥棒も横行する
行き倒れの人間を市の職員が回収するシーンなども描かれ、その背景はなんとも荒んでいる。

日本ではバブルの時代に入り、豊かなはずの80年代
軽いタッチのコメディが沢山な印象だったのになぁと違和感を覚えつつ観てましたが
暗い部屋で宗教番組を異様なまでの無表情さで眺める両親の描写にふと思うのは、オットーの目線ではこれほどまでに両親に存在感がないのだろうということ。


好景気の裏で取り残される人間の悲哀とか、何かに反抗することで自分の存在を主張したい若者の生き様とか、70年代風にすれば、どこまでも暗く陰鬱になりそうなところを、とがった青年が嵌るエステヴェスを主演に据え、軽めなSFで描ききるところに、この映画の突き抜け感が出ていて、これも青春だとキュンとする。




オットーの指南役のレポメンたちもいい。
ベテラン・レポマン役のハリー・ディーン・スタントンなんて、『パリ・テキサス』の主人公がようやくたどり着いた生き方にも思えてまう。
外れた道を歩き、人生の悲哀を知り尽くしたからこそ、オットーの尖りも理解できる
2人の交流がさり気にあたたかく、スタントンの去り際もまた哀愁。

説明が少なく、途中「ん?」と思う部分もあったけど
ラストシーンでは爽快感と刹那感という相反する感覚に包まれた。
若いときに観ていたら、心で感じる映画になっていたんじゃないかな。
歳とると頭で考えてしまうのが寂しいところ。