しまんちゅシネマ

映画ノート

行き先の見えない孤独なロードムービー『断絶』

モンテ・ヘルマンの最新作『果てなき道』は理解できず路頭に迷ってしまった。
でも1971年製作の『断絶』こそが、果てなき道を行く若者を描くロードムービーです。


断絶
1971年(アメリカ)
原題:Two-Lane Blacktop
監督:モンテ・ヘルマン
出演:ジェームズ・テイラーデニス・ウィルソン
ローリー・バードウォーレン・オーツ
ハリー・ディーン・スタントン

55年型改造車シェヴィーを操るザ・ドライバーとザ・メカニックは、
夜のオートレースに参戦した後、賭けレースの相手を求め車を走らせる。
途中転がり込んできたザ・ガールを加えた3人は、
オレンジ色の最新型ポンティアックGTOに乗った男と、
互いの車を賭けた大陸横断のレースを敢行することになる。





シェヴィーに乗るのはドライバー、メカニック、
そして勝手に車に乗り込んだザ・ガール
ついに名前で呼ばれることのなかった彼らは
その素性も将来の目的も、何を考えているのかさえわからない。

彼らのレースの相手となる男(ウォーレン・オーツ)も
車の名前GTOと呼ばれるのみ。
ピカピカの新車に乗り、ハッタリとホラばかりをかますこの男は
ヒッチハイカーを拾っては、ハイカーに嫌われ、あるいは傷つき
それでもまた誰かを隣に乗せて、嘘とも真もわからぬ自分話をしてきかせる。
虚無とのギャップに一層の孤独が浮き彫りになるのです。

男たちにちょっとしたセンセーションとなるのが紅一点のガールの登場。
もしかしたら誰かの道を拓く存在になるのか?と思いきや
ガール自身が道を進むのを拒むかのごとく
身の丈の荷物だけを抱え、彼らの前から走り去る・・。




70年代初頭、ベトナム戦争の影を引きずり、アメリカの若者の誰もが
将来に希望を見出せないでいた時代。
シンガーのジェームズ・テイラーが演じたドライバーの
暗く鋭い瞳が、やり場のない若者の怒りと虚無感を代弁します。
しかしドライバーの見据える道はどこにも続かず
フィルムの燃え尽きるラストシーンに断絶を思い知らされるのです。

カニックを演じたビーチ・ボーイズデニス・ウィルソンはヤクのため海で死に
ガールを演じたローリー・バードは、アート・ガーファンクルのマンションで自殺。

出演者の不遇な人生も相俟って、孤独とやるせなさが胸を打つ
アメリカン・ニューシネマの傑作に数えられる一本です。

★★★★