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映画ノート

酒とバラの日々

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【作品情報】
酒とバラの日々(1962)アメリ
原題:Days of Wine and Roses
監督:ブレイク・エドワーズ
脚本:J・P・ミラー
出演:ジャック・レモンリー・レミック、ジャック・クラグマン、ジャック・アルバートソン

【感想】
ローラ殺人事件』のラスト付近、ラジオから流れる詩の朗読で「Days of Wine and Roses」というフレーズが出てきたので、今日はその繋がりで。

最初にトリビアから入ると、この詩は傷心からアルコール中毒に陥り、32歳で夭逝したアーネスト・ドーソンが自身について綴った詩"Vitae Summa Brevis" (1896)からの一節で
They are not long, the days of wine and roses:
Out of a misty dream
Our path emerges for a while, then closes
Within a dream.  と繋がります(wikiより)

ローラ殺人事件」ではアル中というキーワードはないものの、ローラに溺れ甘美な日々を過ごした犯人が
嫉妬心から破滅してしまうさまをこの詩に投影したのでしょう。

前置きが長くなりましたが、「Days of Wine and Roses」をタイトルにした本作は、アルコール中毒に陥った夫婦が闇から必死に立ち直ろうとする物語であり、ドーソンの詩の世界に通じます。

仕事のストレスから酒に走りがちになる夫が、寂しさから妻にも酒の相手を強要するうち、夫婦揃ってアル中になってしまう。こうなると歯止めをかけるものが¥ないわけで、二人のアル中は急速に進んでしまうのが悲惨です。
映画でよく見かけるアル中患者の集会AA(Alcoholics Anonymous)ミーティングが本作でも登場します。
ここで中毒患者たちはお決まりの「私は○○(名前)、アルコール依存症です」という台詞で挨拶し、体験談などを述べるわけですが、美しく聡明で結婚前は優秀な秘書として社会的な地位にあった妻キルステンはどうしてもAAミーティングに行けません。まずはプライドが邪魔をするのでしょう。プライドを捨て、アル中である自分に向き合うことが克服の第一歩。しかし、それが一番難しいのですね。

夫婦で中毒と言う泥沼がこれでもかと描かれ、キュートだった二人がボロボロになって破滅に向かう様は実に壮絶。酒の恐ろしさを思い知らされました。

この翌年製作の『ピンクの豹』でコメディ監督としての地位を確かなものにするブレイク・エドワーズ監督が、こんなシリアスな映画も撮ってたんですね。

熱演のジャッ・クレモンとリー・レミックは揃ってオスカーノミネート。
ヘンリー・マンシーニの美しいタイトル曲が作曲賞を受賞しています。