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映画ノート

【映画】ハッピーエンドの選び方



ハッピーエンドの選び方(2014)イスラエル
原題:Mita Tova/The farewell party(英題)
監督/脚本:シャロン・マイモン/タル・グラニット
出演: ゼーヴ・リヴァシュ/レヴァーナ・フィンケルシュタイン/ アリサ・ローゼン/ イラン・ダール /ラファエル・タボール
日本公開:2015/11/28
【あらすじ】
エルサレムの老人ホームに妻と暮らす発明好きのヨヘスケルは、死の床にあって苦しむ友人マックスから楽に死ねる装置を作って欲しいと頼まれ・・

めずらしくイスラエル映画を観てみました。
老人ホームを舞台に、尊厳ある死を巡る騒動を描くヒューマンコメディ。
ベネチア映画祭で観客賞を受賞した作品です。



誰もが迎える死。
しかし、医療や科学が進んでも、まだわたしたちは思うようには自分の死に様を選ぶことは出来ません。この映画のマックスおじいちゃんもオムツを替えてもらうことにも大変な苦痛が伴う状態で、余命わずかならこれ以上苦しまずに逝かせてあげたいと、長年連れ添った妻がそう望む気持はよく判ります。

最初は依頼を断るヨヘスケルですが、夫婦の苦しみを理解し、ついにマックス自身にボタンを押させ、静かな死を迎えさせます。
これが水面下で話題となり、ヨヘスケルの元に安楽死の依頼が寄せられるようになってしまうんですが・・

自分で死を選んだとしても、機械や毒薬を提供する者にまるで罪がないはずはないでしょうから、そのあたりはどう描くのかなと気になりながら観たんですが、そこはあえてスルー。

勿論ヨヘスケルとその仲間は罪の意識は持ち合わせていて、だからこそ法をかいくぐる工夫もされているのだけど、法律レベルで掘り下げようとする人には、物足りないかもしれませんね。

この映画はあくまで自分で死を選択すること、愛する家族の死を尊重することに重きを置いたもの。

途中から、ヨヘスケルの妻の認知症の進行にストーリーの軸がシフトし、映画の本質が体の苦痛だけでなく、人としての尊厳にあるのだと気づくことになります。

認知症と癌患者とをいっしょくたに考えられないなぁと思いつつも、ヨヘスケルの妻がシャーリーズ・セロン似の綺麗な人で、物を忘れ自分を失っていく彼女の悲しみはよく伝わり、人間らしく生きる(死ぬ)という点では同じなのかなとも思えてくる。

ところどころユーモアを交えてはいるけど、いかんせん内容が重いのであまり笑えない。それでも歳をとった仲間たちが助け合いながら、人間らしくあろうとする姿は粋で究極の夫婦愛にも泣けた。こういうのは理屈じゃないですね。

個人的にミュージカル風になるところだけはいただけなかった。
死んだ人まで歌わせなくても・・(笑)